2012 Fiscal Year Annual Research Report
東日本大震災の死後措置プロセスに関する人類学的研究
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24820057
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田中 大介 早稲田大学, 人間科学学術院, 助手 (20634281)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 死 / 死後措置 / 葬制 / 遺体 |
Research Abstract |
本研究は2011年3月に発生した東日本大震災における死後措置プロセス、すなわち死を契機とした看取り・遺体処置・葬儀・埋火葬・死亡手続・供養など、「死への対処」をめぐる一連の過程を実地調査によって記録化し、その作業を通じて今後に向けた課題と施策を検討することを目的とした研究である。 今回の震災を含め、災害を主題とした研究は既に諸分野で幅広く展開しているが、大量死への実践的対処と、その背後にある社会-文化的ファクターという視点については、それが防災・減災・救助・復興といった危機管理をめぐる命題から逸れた応用性を欠くもののように漠然と捉えられているためか、積極的に焦点化されてきたとは言い難い。これに対して申請者は、実際に被災地で重大な困難を生じ、今もその状況が続く「災害によって生じた死と死者をどう扱うか」という問題を精緻に検証し、将来の災害対応につなげることを目指して作業を進めてきた。 この目論見に沿って、本年度はまず調査先の選定・受入に関する折衝を進めるとともに、基礎的情報の取得を期したインタビューを実施した。また、過去の大規模災害に関する文献・資料・統計などの精査も同時並行して進め、現在に至っている。これらは東日本大震災における死後措置プロセス全体の俯瞰的構図を把握することを狙いとした準備的作業であるが、加えて本年度では福島・宮城・岩手の被災三県以外の地域から震災直後に現地入りした葬儀社従業員や関係者などにも調査を実施し、多角的な情報を摂取することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項「研究実績の概要」においても一部記載したように、研究期間が2012年秋季からの開始ということもあり、当初計画で期した本年度の作業はまず調査対象との折衝を行うことに大きな比重を割いていた。この点については順調に進捗し、さらに文献・資料・統計などの精査についても計画通りの成果を挙げている。 これに対して、インタビューならびにフィールドワークを中心とした実地調査に関しては、東日本大震災における死後措置プロセス全体の俯瞰的構図を把握するという所期の目的は達成したものの、特に被災三県の調査予定先の一部から次年度以降の受入を要請されたため、全ての計画を完遂するまでには至っていない。しかしながら、準備的作業に関してはほぼ達成しており、また「震災の経験と記憶が未だ現地において鮮明な時点での調査実施を見込む」という当初計画の狙いは充分に果たされたため、本年度の研究作業はおおむね順調に進展していると思料する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究作業がおおむね順調に進んだことに加えて、その作業の中で問題点の洗い出しを逐次行ったものの特段の方針変更の必要性は認められなかったため、研究期間の最終年度となる次年度も当初計画の予定通りの作業を進めていく予定である。だが、今後は調査先の職能の範囲がこれまで以上に広がりを持つと同時に、「原発事故で生じた放射能汚染を回避しながら遺体の捜索や処置を行う」という事態の機微についても新たな焦点として加わるため、より広汎かつ精緻な情報摂取に努めるとともに、調査データの整理・分析に即した施策提案に繋げられるような考察を段階的に進めていくことを期している。
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Research Products
(4 results)