2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24820067
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
今井 澄子 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (20636302)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 美術史 / フランドル / ブルゴーニュ / 祈祷者 / ネーデルラント / フィリップ・ル・ボン / ニコラ・ロラン |
Research Abstract |
初期フランドル絵画に描かれた祈祷者像は、敬虔な信仰心を示しつつ、祈祷対象と同じ大きさで空間を共有し、自身の富やステイタスを強調するような表現を特徴とする。このような祈祷者像の「モデル(模範)」として、ブルゴーニュ公の祈祷者像と肖像を位置づけることが本研究の目的である。最終年にあたる本年度は、三代目ブルゴーニュ公フィリップ・ル・ボンの肖像と祈祷者像の調査・分析と、初期フランドル絵画の祈祷者像との比較・検討を行った。 まず、フィリップ・ル・ボンの肖像・祈祷者像については、昨年度からの調査を続行し、記録のみ残る作品と現存作品に分けてリスト・アップし、画像資料を入手した。これにより、板絵・写本挿絵・壁画・ステンドグラス・彫刻作品からなる包括的なリストがほぼ完成した。続いて、フィリップの『聖務日課書』や『時祷書』、そして『天使祝詞論』に表わされた祈祷者像を中心に図像分析を進め、個々の作品に、自己称揚的な要素と、信者としての適切さに配慮した要素が共存しているさまを詳しく捉えることができた。とくに、フィリップの注文による作品と他者の注文による作品に分けて検討することで、フィリップ自身が意識した表現が明確になった。 つぎに、初期フランドル絵画の注文主として公国の宰相ニコラ・ロランに注目し、《ロランの聖母子》や《ボーヌの祭壇画》などに見られるロランの祈祷者表現と、フィリップの肖像・祈祷者像を比較・検討した。それにより、ロランの祈祷者像の自己称揚的な要素が、時代が進むにつれて抑制的な表現へと変化していったさまがうかがえた。それは、ロランが仕えたフィリップ・ル・ボンの祈祷者表現を踏まえたうえでの適切さへの配慮であったと捉えることができる。 以上の研究成果については、本務校の紀要(2冊)と学会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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