2012 Fiscal Year Annual Research Report
生理用品の流入による女性の身体観の変容:パプアニューギニアの事例から
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24820074
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
新本 万里子 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 外来研究員 (60634219)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 文化人類学 / パプアニューギニア / 月経 / 生理用品 / 身体観 |
Research Abstract |
本研究は、パプアニューギニアにおける生理用品(ナプキンのような西洋起源の月経処置の道具)の受容を事例に、月経にまつわる慣行やその使用による身体観の変容を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するため、本年度は、東セピック州マプリック地区ニャミクム村において予備調査を実施し、パプアニューギニア大学図書館ほか、マプリック地区で活動しているNGOなどで資料収集を行った。 調査村では、20代から80代までの女性29名に、これまでに使用した月経処置の道具、使用の仕方、使用感、廃棄の仕方について聞き取りを行った。その結果、月経処置の道具は、①月経小屋のなかに敷いたヤシ科植物の仏炎苞(実を包むように成長する羽状の葉) → ②布(仏炎苞の上に敷く) → ③布(パンツをはいて固定する)、または生理用ナプキン というように変遷し、世代間で月経処置の経験が異なることが明らかになった。このうち、①の月経小屋はすでに現存しておらず(2006年までは確認できた)計測できなかった。月経小屋を使用した経験のある女性から、複数の月経中の女性が一緒に過ごすことがあったこと、直接仏縁苞に座るため肌がくっつくという不快感があったこと、月経中でも森へ行き薪集めなどを行なったこと、泉で頻繁に体を洗ったことなどを聞き取った。女性たちが次第に月経小屋を利用しなくなるのは、パンツとナプキンの普及を要因としており、これらの普及には、流通ルートの確保と学校での保健授業が関連していることも明らかになった。 これまで、月経小屋にまつわる慣行は、その存在こそが知られていたが基礎的なデータの水準で存在していなかった。本年度のデータ収集は、そうしたデータの欠落を埋めるとともに、生理用品というモノの普及と、身体的な感覚、月経についての意識の関係を明らかにするのにつながるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度実施した予備調査において、生理用品の変遷を概ね把握した。その使用の仕方や使用感についても聞き取りを始めている。生理用品の普及については、流通ルートの確保と学校での保健教育が関連していることも把握できた。こうした結果をふまえて、来年度の調査項目の見直しを進めているため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も調査村で資料収集を行い、データの信頼性を高めるとともに、保健教育がパプアニューギニアの学校教育にいかに組み込まれたのかについて資料収集を行う予定である。そのため、来年度は、パプアニューギニア国立古文書館での資料収集に十分な時間を割きたいと考えている。収集した資料を分析し、口頭発表、論文という形で、結果を公表する。 今年度の資料収集において問題となったのは、布やナプキンなどが流入する以前に月経処置の道具として使用されていたヤシ科植物の仏炎苞の収集である。植物の一部であり、収集には十分な乾燥と保存処理、保管場所の確保、許可申請などが必要であると考えられた。これについては所属研究機関の国立民族学博物館に相談し、収集の目途を立てたい。
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