2012 Fiscal Year Annual Research Report
視覚表現とコレクションの形成に見る縄文土器の美術的受容に関する研究
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24820076
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
Principal Investigator |
鈴木 希帆 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, 研究員 (80633718)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 縄文土器の流通 / 日本美術史 / 考古学 / 古美術品の流通 / コレクション / 近代 / フランス / 明治 |
Research Abstract |
調査研究実績: 「A.視覚表現に関する調査」では、明治期から昭和初期にかけての好古家の縄文土器への関心についての研究の一環として、青森県立郷土館と弘前大学亀ヶ岡文化研究センターの成田氏資料についての調査を行った。本調査では蓑虫山人作の資料に当館列品との関連性が見出された。これにより、本調査結果は次年度の特集陳列の基礎資料としても活用が可能となった。また、大阪大学学術総合博物館に寄託されている日本の前衛芸術を代表する画家・吉原治良のスケッチ帳の調査では、岡本太郎による縄文への注目以前に存在した関西の美術家たちによる縄文への関心の実態に迫る研究を行った。 「B.美術館・博物館における縄文土器のコレクションについての調査」では、フランスのギメ東洋美術館及びチェルヌスキ美術館での海外調査を実施し、明治時代に国外に流出した日本の考古遺物が、美術として受容されている海外の実状を調査し、その経緯について研究を行った。フランス国立図書館でも関係する資料の収集を行った。このほか国内では、京都大学文化財総合研究センター、是川縄文館、MIHO MUSEUM、大阪府立弥生文化博物館、京都造形芸術大学芸術館などの展示やコレクションの調査を行った。 研究成果の公表: 国立歴史民俗博物館の共同研究「歴史表象の形成と消費文化」(研究代表:岩淵令治)の研究会において、研究協力者として、考古遺物の蒐集行為を消費文化の枠組みにおいて考察した口頭発表「集古会周辺における縄文受容」を行った。このほか、神奈川県立歴史博物館の「勝坂縄文展」において展示企画者の千葉毅氏との記念対談「縄文土器を美術史と考古学から語る」を行い、研究の成果を市民に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、国内3回(青森県、滋賀県・大阪府・京都府、京都府)、国外1回(フランス・パリ)の出張調査を行い、合計10件の「視覚表現とコレクションの形成に見る縄文土器の美術的受容」に関する調査を実施することができた。また、他施設の寄託資料を含め、ほぼ当初の予定通りに希望する資料を撮影することができ、写真撮影点数は約1,000枚にのぼる。 これらの調査結果をもとに、国立歴史民俗博物館共同研究「歴史表象の形成と消費文化」(研究代表:岩淵令治)第9回研究会における口頭発表「集古会周辺における縄文受容」(平成24年6月24日)と、神奈川県立歴史博物館平成24年度かながわの遺跡展「勝坂縄文展」における記念対談「縄文土器を美術史と考古学から語る」(企画者:千葉毅学芸員)(平成25年2月2日)の2件の発表を行い、当初の予定通りに研究成果を公表することができた。 東京国立博物館の通常職務との兼ね合いにより、次年度に調査を予定していたフランスのギメ東洋美術館の調査を先に行ったが、集中した調査により有意義な情報を収集することができた。調査資料の整理とデータベースの構築は次年度の課題とするが、以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行った研究成果の口頭発表、および国内外における調査では、今後の調査に必要な人脈を広げることができた。また、フランスでの調査の経験から、海外における本調査の効率的な資料の収集方法を習得することができた。これにより、平成25年度に予定する国内外の調査はより円滑に進むものと予測される。 平成25年度は、申請書にあげた「A.視覚表現に関する調査」については、前年度に収集した青森県の成田氏や関西の前衛芸術家・吉原治良の資料、および東京国立博物館の関係資料のデータベースを作成する。このほかに、岡本太郎美術館の縄文土器に関する写真資料の調査を行う。「B.美術館・博物館における縄文土器のコレクションの調査」については、前年度に海外調査で得た文献資料と画像を整理し、ヨーロッパの動向についてまとめる。そのほかに、これまで調査した国内と海外のコレクションについてのデータベースを作成する。また、アメリカ・クリーヴランド美術館での調査を予定している。 なお、平成25年度は、本研究の完成年度でもある。そこで、研究成果の一部をもとに、所属する東京国立博物館において考古学研究員の協力を得て、展示・特集陳列「うつす・つくる・のこす-近代における考古資料の記録-」を開催し、研究成果を研究者および市民に公表する。また本館の研究誌などに、展示に関連させた論文を発表することも予定している。
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Research Products
(1 results)