2012 Fiscal Year Annual Research Report
証明の学習指導における議論の活動を捉える枠組みの構築
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24830017
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
辻山 洋介 筑波大学, 人間系, 特任研究員 (10637440)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 証明 / 数学教育 / 議論 / argumentation / 教科教育学 / 科学教育 |
Research Abstract |
本研究は,学習指導において実現すべき証明の構想及び証明の構成の特質を特定するために,証明の学習指導における「議論(argumentation)」の活動を捉える枠組みを構築することを目的としている。この目的を達成するために設定した研究課題のうち,本年度は次の考察を行った。 第一に,数学教育学及び科学哲学における関連文献を精読し,証明の学習指導における議論の活動を捉える枠組みを理論的に検討した。具体的には,まず,人が実際に行う議論に備わる蓋然性に着目したトゥールミン(Toulmin, 1958/2003)の研究を,その哲学的基盤を考慮して解釈することにより,次の議論の特性を抽出した。それは,「蓋然的であっても主張を正当化するために,蓋然性の度合いを付加することにより/例外を除く条件を付加することにより/論拠を暫定的に利用することにより/タイプに応じた基準を参照することにより,擁護しながら論を立て,評価すること」である。そして,この特性に基づいて,議論の活動を捉える枠組みを理論的に検討した(研究発表2件は,いずれもこの検討の成果である)。この考察の意義は,証明活動の一部分に特化した記述的な分析を中心に展開されてきた先行研究の限界を乗り越え,証明の構想及び証明の構成に関する一連の活動を対象に,学習指導において実現すべき活動を理論的に特定したことにある。 第二に,次年度の実践的考察に向け,予備調査の計画・設計を行った。具体的には,理論的に導出された枠組みに特徴的な活動を調査において顕在化するための方法を,課題や発問を中心に検討した。証明の構想及び証明の構成の両者に焦点を当てた学習指導の必要性が指摘されるようになったが,その具体的な方策はいまだ明らかではない。この方策の解明を目指し,理論的考察と実践的考察を総合することに向かう点に,この考察の意義を指摘することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載した通り,交付申請における本年度の研究実施計画におおむね沿って成果を上げられた。第二の課題においては,予備調査の計画・設計を,現職教員に助言を得ながら行う計画であったが,この点は十分に行えなかった。ただし,次年度の実践的考察において補うことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,次の三つの課題に取り組む。 第一に,現職教員に助言を得ながら,予備調査の計画・設計を進める。第二に,現職教員に助言を得ながら,予備調査を実施・分析する。そして,分析に基づいて枠組みの修正すべき箇所を特定し,修正箇所に関連する文献を精読する。第三に,本研究の結論である枠組みを構築する。そして,構築した枠組みに基づいて,本調査の計画・設計を行うとともに,一連の研究成果を総合し,証明の構想及び証明の構成に焦点を当てた学習指導への示唆を導出する。
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