2012 Fiscal Year Annual Research Report
外傷性ストレス体験者の否定的・肯定的な認知や活動に着目した認知行動論的研究
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24830036
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 大輔 金沢大学, 保健管理センター, 助教 (20631089)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | PTSD / トラウマ / 認知行動理論 / 否定的認知や活動 / 外傷後成長 |
Research Abstract |
本研究は,PTSD患者の否定的・肯定的な認知と活動の交互作用がPTSD症状や生活適応に及ぼす影響を明らかし,肯定的な認知や活動にも着目した新たな介入法を提案するために実施された。 具体的には,「否定的な認知と活動」として,PTSDのリスクに関わる個人差要因と考えられている「外傷性ストレス体験やPTSD症状に対する否定的認知, 回避的対処」を,「肯定的な認知と活動」として,現在,PTSD治療で着目されている「外傷後成長に関する認知や対処」を取り上げ,これらの交互作用を明らかにする。つまり,否定的・肯定的な側面の交互作用を明らかにすることによって,従来,否定的な認知や活動の低減を重視していた認知行動療法などの治療プロトコルを再考し,より効果的な治療法の確立に向けた実証的な知見を提案できると考えられた。 初年度は,健常群およびPTSD患者のデータ収集を行った。そして,PTSDのリスクファクターとして考えられてきた認知行動的要因がPTSD症状に及ぼす影響についての検討した結果,健常群およびPTSD患者のいずれの対象者においても,PTSD症状を否定的に解釈したり,回避的に対処することによってPTSD症状が悪化することが確認された。またPTSD患者の生活適応に対しては,肯定的解釈や責任転嫁といった認知行動的対処が効果的であることが示唆された。 今後は,引き続き,PTSD患者のデータ収集を行い,否定的・肯定的な認知と活動の交互作用がPTSD症状や生活適応に及ぼす影響について検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PTSD患者において目標症例数に若干満たしていないものの,解析に耐えうるデータ数が収集されたため,研究目的に照らして,予備的検討を行うことが可能であった。 また得られた結果も仮説を支持するものであり,これらの成果を学会発表等で公表できたため,おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,研究を遂行する上で大きな問題点はない。 今後は引き続き,PTSD患者のデータ収集を行い,データ収集後には,予定していた解析を実施し,成果をまとめる予定である。なお,その際には,臨床実践家や他領域の研究者との情報交換を行いながら,学術論文としてまとめる。さらに,途中経過についても,学会発表等も行い,その成果を公表していく予定である。
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