2012 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症スペクトラム児の精神的健康と適応に関連するプロテクティブ要因の縦断的検討
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24830039
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
高柳 伸哉 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20611429)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 調査実施 / 調査協力者との連携 |
Research Abstract |
本研究の1年目となる24年度では,以下の調査活動を行った。 研究実施計画の研究1にあたる一般小中学生と保護者,担任教師への調査を実施した。しかし,担任教師への聞き取りに関しては,個人情報保護の観点や担任が多忙等の理由のため,当初の計画から実施方法を変更した。協力市の指導主事と相談して検討し,各学校の生徒情報を把握している教師を選出してもらい,1時間程度の半構造化面接を行った。ただし,上記の理由から面接の録音はせず,資料を用いたデータの確認による大まかな妥当性検証と,適応しやすい児童生徒の特徴の聞き取りメモという質的な調査となった。 研究2にあたるASD児への調査も実施した。保護者面接については,当初の想定以上の協力者が集まり(24組),対象児に関してのエピソードや成長ポイントの聞き取りを行った。 本研究の目的として「ASD児の精神的健康と生活適応に影響を及ぼすプロテクティブ要因を見出すこと」をあげているが,この目的に関して,面接に参加した教師と保護者に説明した際には,強い関心を持っていただくとともに,子どもの成長を促しプラスの面を増やしていくことへのニーズの高さが確認された。教師面接では,市の指導主事を通して理解と協力が可能な体制を作れたことに加え,協力市全小中学校の教頭などの代表教員と面接ができた。面接では多様な子どもの実態や教員の教育観が得られ,探索的なデータ収集に重要な役割を果たすとともに,教育現場と研究知見とをつないでいく期待も寄せられた。また保護者面接では,日頃子どもの気になる面に着目しがちになってしまうことを訴える保護者が多いこと,あらためて子どもの特徴や成長に目を向けることで保護者自身が肯定的な気持ちになれると報告され,当事者にとっても有意義であるものと思われる。 最終年度となる25年度では,調査を継続するとともに,膨大な収集データの分析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の実施とデータ分析については,研究実績の欄に記したように,調査を実施することができた。また当初の予定通り当事者団体の専門家の協力を得られるとともに,作業の補助要員も確保できている。 タイトなスケジュールではあったが,以上のように,現実的な課題への対応による多少の計画変更はあったものの,研究対象者である学校や保護者の理解とともに,当事者団体の専門家等の支援も得られている環境にあり,概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
理由の欄に示したように,今後も順調に研究計画を実践できるよう,関係機関や専門からとの情報交換を進めながら調査を実施していく。今後,もし計画の変更が生じたり課題が露呈する事態になったとしても,関係機関や専門家との相談体制を十分に活用ができると思われる。 また,調査実施やデータ収集は順調である一方,分析や成果発表は今後進めることになる。25年度は最終年度ともなるため,学会発表等による研究成果の公表も実践していく。また面接協力者である教師や保護者への,得られた知見のフィードバックも当事者への還元として重要であり,可能な限り実施して行きたい。具体的には,教員研修における成果発表や,ASD児への支援における知見の活用,保護者への成果発表を想定している。
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