2012 Fiscal Year Annual Research Report
内的作業モデルの情動認知バイアスと社会的適応性の関連についての検討
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24830063
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
島 義弘 鹿児島大学, 教育学部, 講師 (00631889)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 内的作業モデル / 表情認知 / 社会的適応 / 情動 |
Research Abstract |
本年度は表情認知実験用の刺激セットの作成とその妥当性の確認,および次年度に実施する実験のプログラム作成を行った。これらの成果をまとめて,平成25年度中に学会発表および論文投稿をする予定である。 刺激セットの作成では,大学生168名を対象とした質問紙調査を行った。ニュートラル表情(真顔),快表情(喜び),自己志向的ネガティブ表情(悲しみ等),他者志向的ネガティブ表情(怒り等),覚醒表情(驚き等)の5カテゴリーを代表する74枚(真顔10枚+その他4カテゴリー男女各8枚)の写真のそれぞれについて情動評定を求めた。なお,真顔以外の表情については,(1)そのカテゴリーに該当する情動の評定のみが高いもの(典型表情)と,(2)そのカテゴリーに該当しない情動に対する評定も高いもの(非典型表情)を半数ずつとした。 調査結果に基づいて20枚の写真を選び,刺激セットとした。20枚の内訳は,5カテゴリー各4枚で,1カテゴリー4枚の中には男性典型表情,男性非典型表情,女性典型表情,女性非典型表情が含まれている(真顔については,度の情動も読み取られていないものを典型,複数の情動が高く評定されているものを非典型とした)。この刺激セットを使用して,大学生18名を対象に調査を行った結果,その表情が表わすと想定している情動の評定が他の情動の評定よりも高く,「ニュートラル表情」以外の4表情についてはその表情と対応する情動の評定は典型表情が高く,対応しない情動の評定は非典型表情のほうが高かった。また,「ニュートラル表情」ではすべて有意差なし,もしくは非典型表情の評定値が高くなっていた。 以上のことから,本年度の調査によって作成された刺激セットは表情認知課題に使用するための妥当性を備えたものであると考えられ,この刺激セットを使用した実験プログラムの作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度はおおむね予定通り研究を進めることができた。刺激の作成では,当初は等価な2つの刺激セットを作成する予定であったが,2セットの作成は困難であることが判明したため,予定を変更して1つの刺激セットを作成した。これに伴い,2つの刺激セットの等価性を確認するために予定していた調査を取りやめ,代わりに刺激セットの妥当性を確認するための調査を実施した。調査の結果,刺激セットの妥当性が確認されたため,これらの刺激セットを使用した実験プログラムの作成を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度はおおむね予定通り研究を進めることができ,調査・実験をするための準備が整った。本年度は前年度作成した刺激セットを使用した調査・実験を実施する。 調査では,内的作業モデルと社会的適応との関連を表情認知の個人差が媒介しているという仮説を検証するための研究を行う。この際,表情刺激の呈示時間を十分に確保し,情報を精査できる状況での情動認知の個人差を測定する(統制的処理)。内的作業モデルが不安定であるほど,非典型表情からより多くのネガティブ情動を読み取り,ネガティブ情動の読み取りが多い人は適応感が低いことが予測される。実験では,刺激の呈示時間を短くし,瞬間的に情報を処理しなければならない場面での情動認知の個人差を測定する(自動的処理)。内的作業モデルが不安定であるほど,ネガティブ表情の判断が速く,ある表情に多くのネガティブ情動が「有」と判断しやすい傾向にあると予測される。 これらをもとに,特に,対人関係に不適応を感じやすいとされる,不安定な内的作業モデルを持つ人がどのような情動に対して敏感になっているのか,どのように情動認知にバイアスを生じさせているのかを明らかにすることを目指す。また,自動的処理と統制的処理の間の差異を検討することで,情動認知バイアスへの気づきと社会的適応への支援のあり方を考える。
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