2012 Fiscal Year Annual Research Report
四半期キャッシュ・フロー情報の有用性に関する実証研究
Project/Area Number |
24830068
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Research Institution | Hokkaido Information University |
Principal Investigator |
松本 紗矢子 北海道情報大学, 経営情報学部, 講師 (80633247)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 四半期財務情報 / 実証研究 / 四半期開示 / 四半期報告制度 / キャッシュ・フロー / 株式市場 |
Research Abstract |
わが国では,本格的な四半期報告制度を導入してから,わずか3年後の2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から四半期開示が簡素化されることとなった。その主な変更点として,第1四半期と第3四半期のキャッシュ・フロー情報が任意開示となったことがあげられる。しかしながら,四半期キャッシュ・フロー情報に含まれる情報内容について,わが国においては十分な検証が行われていない。本研究の目的は,投資者が四半期キャッシュ・フロー情報を実際に証券投資の意思決定に役立てているのかどうかについて検証することである。 本年度は,財務データの収集及びデータベースの構築を行い,2004年3月期~2010年3月期にかけて,わが国市場に上場している3月決算企業を分析対象とし,四半期キャッシュ・フロー情報に対する株価反応について実証分析を行うとともに,四半期利益情報を所与としてもなお,株価変化を説明する情報内容が四半期キャッシュ・フロー情報に含まれているのかどうかについて分析した。 具体的には,四半期決算発表日前後の日次ベースの株価変化を従属変数,変化額ベースと水準額ベースで算定した,四半期ベースの営業活動によるキャッシュ・フロー,投資活動によるキャッシュ・フロー,及び財務活動によるキャッシュ・フローを,それぞれ独立変数に用いた回帰分析を行った。さらに,四半期利益情報に情報内容が存在することを踏まえた上で,四半期ベースの期待外利益率と営業活動によるキャッシュ・フローを独立変数に用いた回帰分析を行った。 その結果,水準額ベースを用いた場合,とりわけ,第1四半期~第3四半期の営業活動によるキャッシュ・フローに関して,会計利益情報を所与としても,なお,株価変化を説明するプラスの情報内容を有しているという証拠が得られた。これらの成果は,今後,学会等で報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,財務データを収集してデータベースを構築し,先行研究のレビューを行い,さらに四半期キャッシュ・フロー情報に対する株価反応について実証分析を行った。 具体的には,投資リターンの側面から,四半期利益情報を所与とした上で,四半期キャッシュ・フロー情報が,新たな情報内容を追加しているかどうかについて検証を行った。その結果,水準額ベースの第1四半期~第3四半期の営業活動によるキャッシュ・フロー情報を用いた場合,四半期利益情報を所与としても,なお,株価変化を説明するプラスの情報内容を有しているという証拠が得られた。この成果については,学会等で報告予定である。したがって,順調に計画を遂行できているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては,最新の財務データを追加的に収集して,データベースを再構築するとともに,先行研究のレビューを行いながら,四半期キャッシュ・フロー情報の有用性に関する実証研究を行うこととする。とりわけ,任意開示となった第1四半期と第3四半期のキャッシュ・フロー情報をどれだけの企業が継続して開示しているかについて注視し,第1四半期と第3四半期のキャッシュ・フロー情報を開示している企業と開示していない企業に対する株式市場の評価について分析を行うこととする。
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