2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24830070
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
平島 ユイ子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (10637812)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 人工内耳装用児 / 音声会話 / コミュニケーションブレイクダウン / 訂正方略 |
Research Abstract |
<はじめに>高度難聴児が人工内耳を装用し音声会話でコミュニケーションするケースが増加しているが、人工内耳装用児(CI児)の音声会話では会話が継続できないコミュニケーションブレイクダウン(以下、ブレイクダウン)が多いことを報告した。会話継続には聞き返しや確かめなどの訂正方略が一般的に有効であるとされているがCI児の訂正方略について十分に検討されていなかった。そこで、音声会話中のCI児の訂正方略活用状況を明らかにし訂正方略活用指導に有用な示唆を得ることを目的とした。<方法>対象は6-8歳のCI児6名と同年齢聴児8名である。手続きは、訂正方略を活用させるために話題転換、低親密語使用、説明省略を会話中に実験的に行いブレイクダウンを誘発した。そして、訂正方略をCI児と聴児間で比較し、話題転換、低親密語使用、説明省略のブレイクダウン誘発に対して活用された訂正方略型を検討した。<結果>訂正方略活用についてCI児と聴児間の差は確認できなかった。CI児の個人差が大きかった。ブレイクダウン誘発要因別に活用された訂正方略型は、話題転換では聴児もCI児も復唱型訂正方略が用いられる傾向にあった。低親密語では聴児は疑問詞型訂正方略を用いており、CI児は疑問詞型訂正方略と復唱型訂正方略が同程度であった。説明省略では聴児は情報追加型訂正方略が多くCI児は疑問詞型訂正方略が多かった。<考察>CI児は話題転換や低親密語の会話では聴児と同様の訂正方略活用によって会話継続していると考えられた。しかし、説明省略の状態においては「何?」と疑問詞型訂正方略で尋ねることはできているが、聴児のように相手の発話から推測したことを述べる情報追加型訂正方略を活用することは乏しく相手の発話意図推測と確認が困難であると推察された。この情報追加型訂正方略活用に関係する言語力を明らかにし、指導につなげる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り実験が進んでいる.しかし、結果において個人差が大きくCI児と聴児間の訂正方略活用数についての有意差が確認できなかった。そこで症例数を増やすために実験機会を5月中に再設定しているところである。しかし、CI児の言語コミュニケーションに関する全国規模の研究においても個人による差が大きかったことが報告されているため訂正方略活用についても同様の結果であることも予測される。もし語彙力や構文力のような個人の言語要因が訂正方略活用に大きく影響し個人差となっているのであれば、関係する言語要因を明らかにする必要がある。また、訂正方略獲得時期に個人差があるとすれば、年齢が上のCI児の訂正方略活用を調べることで明らかにすることができると考えられた。そこで、①訂正方略活用における低学年CI児と高学年のCI児の比較、②訂正方略活用と言語力との関係について検討することとし、4-5月中に9-11歳のCI児童との実験機会を設けることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
会話継続には相手の発話内容や意図を推測し確かめる情報追加型訂正方略が会話継続に有効であるとされるが、CI児の活用は乏しかった。しかし、活用できているCI児がいたことから言語力との関係が推察された。言語力には語彙力や構文力等さらに受容と表出の側面があるため、どのような言語力と関係するのかを明らかにし、訂正方略指導につなげる必要があった。また、指導に際しては、音声会話における訂正方略活用実態を評価する必要があるが、評価方法が十分に検討されていなかった。そこで本研究で用いてきたブレイクダウンを誘発したときの訂正方略活用と通常会話中での訂正方略活用が相関することを確かめ、訂正方略評価方法を確立する必要があった。そこで、本研究では、第1の目的としてCI児の訂正方略活用と言語力との関係を明らかにすることにした。第2の目的として訂正方略活用の評価方法を検討することにし、2つの研究を計画した。<研究1>人工内耳装用児の訂正方略と関係する言語力について:訂正方略活用に関係する言語力を明らかにする。言語力として語彙理解力、文理解力、文表出力、語流暢性と確認型訂正方略活用との関係を明らかにする。<研究2>人工内耳装用児の訂正方略評価方法の作成:コミュニケーションブレイクダウン誘発会話と通常会話における訂正方略活用の違いを検討し、訂正方略評価方法を作成する。手続きは、研究1では5-11歳のCI児15名を対象とし、訂正方略と各言語力との関係を検討する。さらに低学年CI児群と高学年CI児群の訂正方略活用について比較する。研究2では、10名のCI児を対象にブレイクダウンを誘発した会話と日常会話における訂正方略活用数の関係を検討する。また、指導における評価方法を作成する視点からCI児の訂正方略活用だけでなく、活用した訂正方略が対象児と検査者間における会話継続効果についても検討する。
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