2012 Fiscal Year Annual Research Report
アダム・スミス以後の経済学とスコットランド・コネクション
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24830080
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
荒井 智行 中央大学, 経済学部, 助教 (70634103)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | アダム・スミス / デュガルド・スチュアート / スコットランド啓蒙 / 道徳感覚学派 / 教育 / 貧困 |
Research Abstract |
2012年度の研究目的は,アダム・スミス以後の経済学がいかに変容・展開されたのかを,イングランドとスコットランドの教育の比較を通して明らかにすることであった.19世紀初頭のブリテンにおいて,教育の主題が,経済学との関わりでいかに論じられていたのかを,1800年からエディンバラ大学で経済学講義を行ったデュガルド・スチュアートの『経済学講義』の「教育」を,その背景をなす経済史,社会史,教育史などの近隣諸科学と関わらせながら考察した.それにより,経済学の形成期において,スコットランドでは,経済学が教育および道徳哲学と密接なつながりをもっている重要な事実について示すことができた. 研究プロセスは,次の通りである.2012年2月に行われた近代思想研究会での個人報告を基にして,その内容の改善と拡張に努めた.スミス以後の教育論の展開において,イングランドとスコットランドにおける異なる学校教育の展開や工場学校のあり方,ならびに文芸教育および大衆教育の普及の意味ついて,欧米の文献を精査しながら詳細に考察した.また,スミス以後のスコットランドにおいて,教育が重要な意味を持っていたことについての重要な事実となる複数の「書簡」等についても取り上げた.そして,スミスからスチュアートにかけて,道徳哲学と教育とが密接なつながりをもっていた点についても論究した. これらの考察により,スミスからスチュアートの経済学の展開において,経済学が穀物価格の高騰や地金論争などの経済的な問題だけでなく,教育とも深く関係するテーマであったことを明らかにした. その成果は,(1)社会哲学と経済思想研究会(於中央大学)での個人報告(2012年7月20日),(2)社会思想史学会全国大会(於一橋大学)での学会報告(2012年10月28日),(3)某査読誌への論文投稿にまとめられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度の研究成果として,学会報告1回(社会思想史学会大会),研究会での報告1回(社会哲学と経済思想研究会)があげられるが,これらの報告を基にして,年度内での某査読誌への論文投稿は本研究の達成度として十分なものといえる.ただし,同査読誌への論文作成や研究協力者として参加している科研費基盤研究(C)における資料分析などに時間を要しているため,当初の研究計画以上に進んでいるとはいえない(なお,同研究については,2012年10月にマルサス書簡研究会(於福岡大学)において研究報告を行っている). とはいえ,このような他研究に従事することもありながら,本研究において,スミス以後の経済学の展開において教育が重要な意味を持っていた点について考察し論文化できたことは,おおむね順調に進行していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策において注意すべき点は,本研究とは異なる分野の学会報告・論文作成と科研費基盤研究(C)の研究とを上手く両立させながら,本研究を進めていく必要があることである.特に同研究(C)においては,資料分析が途中段階にあると同時に,10月までにその研究の原稿論文を仕上げる必要がある.したがって,これらの研究への従事から,徐々に本研究に力点を移していくことにしたい. 本研究の進め方においては,資料分析と並行しながら論文作成に励みたい.論文作成においては,査読誌において気をつけるべき点などの事前分析を厳密に研究する.また,査読誌の掲載された論文についても可能な限り多くの注意すべき点をチェックする.5月の学会報告とは別に,論文作成の中である程度形になった場合には,途中段階であれ,研究会などで報告することも視野に入れておきたい.また,論文作成の過程で,資料調査が必要な場合には,学期期間以外の8月下旬において現地での資料調査を行うことも考えておく必要がある. 本研究の計画を簡潔に示せば次の通りである.(1)デュガルド・スチュアートの人口論について,5月25日に経済学史学会大会(於関西大学)において学会報告を行う8 エントリー済み).(2)本研究を遂行するうえで,科研費基盤研究(C)における共同研究者とは年に数回直接会う機会があるため,そこで本研究に必要な助言を頂く.(3)スミス以後のスコットランドの経済学の展開に関する論文を査読誌に2本投稿する.(4)本研究の資料分析をより十全なものにする.これらのうち,(3)においてそのうちの論文1本は,8月30日が締切とされているため,2本目の論文作成の時間配分も考えておく必要がある.
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Research Products
(3 results)