2012 Fiscal Year Annual Research Report
学校における長期欠席現象を規定する社会的要因の解明
Project/Area Number |
24830083
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山本 宏樹 東京理科大学, 理工学部, 助教 (20632491)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 長期欠席 / 不登校 / マクロパネルデータ分析 / 政府統計 / 教育社会学 |
Research Abstract |
1970年代半ば以降に増加をはじめた中学生の長期欠席率は現在3.6%に達しており、都道府県レベルで長期欠席者が最も多い大阪府では、40人学級のうち2人は長期欠席者(5.5%)という状態に至っている。この問題をめぐっては、①本人の発達障害や鬱病、非行に原因を見る本人病理説、②親の育て方の問題などに原因を見る家庭病理説、③受験競争、いじめ、教師の資質など学校に原因を見る学校病理説等が一般に語られるが、長期欠席は社会現象であり、個々の事例の下手人捜しに終始していては問題の解決に至ることができない。そのため本研究では、地域統計の分析を通じて都市度、教員生徒比、経済的豊かさ、離婚率など多様な社会的要因が複合的に長期欠席現象を規定している点を実証的に明らかにし、根本的な支援策を提案することを目的としている。 本目的を達成するために、平成24年度は①データ構築体制の整備、②入手容易なデータの収集、③第一次データベースの構築の3つを課題とした。9月の課題採択以降、約半年の短い期間ではあったが①データ構築体制の整備、②入手容易なデータの収集を完了することができた。第一次データベースの構築については予算不足のため部分的に未完了の箇所があるものの、他方で入手困難なデータの収集が想定以上に進んでおり、総体的に見れば計画以上の進度を保っている。また理論的検討も計画以上に進んでおり、本年度中に複数の論考を発表できる見通しである。さらに数理社会学会での活動を通じてマクロパネルデータの分析手法について情報交換を行うことができた。これによって懸念となっていたマクロパネルデータの扱いに関する問題に解決の目途がついたことも大きな収穫だったといえる。 今年度も現状のペースを維持して研究を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり統計資料のデータ化作業に部分的遅延がみられるが、これは早期にキャッチアップ可能である。むしろ計画以上に入手困難なデータを入手できていること、分析法の面でも問題解決が進んでいること、想定外に理論的検討が進み、本年度中に複数の論考を公刊できる見通しが立っていることなどを総じてみれば、研究は当初の計画以上に進展しているとみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り2013年6月のプレ分析、2014年度の学会論文投稿を目指して研究を進める。しかし1年半の研究期間では構築したデータベースの豊穣な潜在的価値を完全に享受するには短すぎる。構築したデータベースにいかなる可能性があるのか、本研究の先を見据えて検討を行っていきたい。
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