2012 Fiscal Year Annual Research Report
東北アジアのトランスナショナルな「争点志向型」都市連携とサブリージョン形成
Project/Area Number |
24830094
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中山 賢司 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助手 (10632002)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 北東アジア地域自治体連合 / サブリージョン / 越境ガバナンス / トランスナショナル / 争点志向型協力 / 国際情報交換 / 韓国 / 中国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、北東アジア地域自治体連合(NEAR)の事例を通じて、国家の論理とは異なる東北アジア・サブリージョン協力とガバナンスの実態を析出することであった。今年度は、関連領域の文献等を渉猟したほか、とくにNEAR全体像に関する一次資料のデータベース化と再検証、現地調査による補足(オブザーバー参加、聞き取り調査)などを実施した(第7回実務者ワークショップ(韓国慶尚北道)、第9回総会(中国寧夏回族自治区)、NEAR事務局(慶尚北道)など)。 これにより、第1に、東北アジア・サブリージョンの萌芽的な越境ガバナンスが、NEAR事務局のイニシアティブによって構築されつつあることが確認できた。いくつかの国際機関とのネットワーク構築や共同事業の企画・運営などが事務局主導であることが判明した。 第2に、NEARの地理的拡大の背景に、国家戦略と地方の対外行動との相互依存的なメカニズムがあることを確認できた。東北アジア地方政府の行動様式は対外経済依存の成長路線という国策連動的な戦略と見做されてきたが、各地方政府の行動実態には、ナショナルな調整・関係を超えたトランスナショナルな水平関係をベースにした政策選択もあったことが浮き彫りとなった。 第3に、NEARの交流・協力関係には経済志向性と同時に、環境などの争点志向性も伏在していたことが確認できた。局地経済圏として語られることの多かった東北アジア・サブリージョン研究に再考の必要を迫るとともに、争点志向型協力関係の詳細な実態把握が今後の課題として浮上した。 以上の成果は、北東アジア学会サテライト研究会(討論者、2012年8月、日本大学)や早稲田大学国際関係論研究会(10月、12月)などで発表するとともに、早稲田大学グローバルCOEプログラム成果出版物『アジア地域統合学』(勁草書房、2013年3月、項目執筆)の中で一部を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、まずNEAR全体像の実態把握と分析に焦点を絞り、文献調査や一次資料の収集・整理と聞き取り調査などに力を注いだ。これらの調査から得られたファインディングスは今後、学会報告や紀要・学術雑誌への投稿等などで順次、公表していく。 なお、2013年度日本国際政治学会(10月、新潟国際情報大学)の国際統合分科会のパネル(「サブ・リージョナリズムの国際政治学――ビッグ・パワーと地域組織の境界ガバナンス」)において、討論者としての登壇が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究課題の主題でもある東北アジア・サブリージョンの争点志向型協力関係の実態把握と課題の抽出に力を注ぐ。具体的には、NEARにおける防災分科委員会と環境分科委員会の活動に焦点を当て、コーディネート地方政府である兵庫県(防災)と富山県(環境)への聞き取り調査、定例会議や協力事業へのオブザーバー参加などを実施する。 これらの現地調査を基に、東北アジアのサブリージョナル・ガバナンスに関する理論構築を試みる。最終研究成果は、学会報告や学会誌等への投稿、もしくは出版などにより広く公表する。
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Research Products
(2 results)