2012 Fiscal Year Annual Research Report
議員属性、特に世襲および年功が公共政策に与える影響に関する理論・実証分析
Project/Area Number |
24830095
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅古 泰史 早稲田大学, 政治経済学術院, 講師 (70634757)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 議員属性 / 公共政策 / 政府支出 / 世襲議員 / 議員の年功 / 多選禁止制 / 選挙 |
Research Abstract |
本研究では、日本・アメリカで議論の対象となることの多い、世襲議員、および議員の年功(当選回数)の違いという2つの議員属性に着目し、主にその政府支出に対する効果をゲーム理論および日米のデータを用いて分析している。 世襲議員に関しては、以下の3点が確認された。第1に、世襲議員は、より規模の大きな配分政策を、当該世襲議員の選挙区が存在する地方自治体にもたらす傾向を持っている。第2に、世襲議員は世襲ではない議員に比べ高い当選確率と得票率をもつ。第3に、より多くの世襲議員を選出した都道府県の経済成長は低まる。世襲議員は選挙に強いため、対立候補を気にせずに利益誘導を行うことができると考えられる。 議員の年功に関しては、以下の2点が確認された。第1に、議会が若手議員に占められている場合、あるいは逆に、年功の高い議員で占められている場合に政府支出は大きく、若手議員と年功の高い議員がバランスよく存在している場合に支出は低くなる。これは、議会内で年功の高い議員が若手議員の行動を律することにより、過大な政府支出を抑えていると考えられる。 第2に、アメリカ州議会における多選禁止制の効果の分析も行った。多選禁止制とは、議員の当選回数に制約を課すものである。その結果、議会内の年功を大きく減らすような厳しい多選禁止制が導入された場合には政府支出は増え、比較的温和な多選禁止制が導入された場合には支出を減らすことが確認された。厳しい多選禁止制が導入された場合、議会が若手議員によって占められることになり、その結果、支出が増大したことが考えられる。 近年議論されることが多い議会改革に関する議論において、以上の分析結果は、重要なものと考える。実際の議員属性の影響が明らかではない中で、議会改革を行うべきではないからである。政策提言に直結するような分析を示すことができるという点は、この研究の意義深い点だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
世襲議員に関する研究は、一定の結果を得られたため、Dynastic Politicians: Theory and Evidence from Japanという論文として、英文校正を行ったうえ、学術誌に投稿中である。 議員の年功に関する研究は、ウィスコンシン大学マディソン校における研究会「Models and Data Group」、学習院における研究集会「計量・数理政治学のフロンティア」などで発表し、また複数の研究者の方に読んでいただき、多くのコメントをいただいた。その中で当初は2003年までのデータを用いていたものを、2010年までに拡張した。これにより、多選禁止制を導入した州の数が増え、多選禁止制に関する研究も可能となったため、上記の通りその分析を行った。そのうえで、一定の結果が得られたため、Seniority, Term Limits, and Government Spending: Theory and Evidence from the United Statesという論文として、英文校正を行ったうえ、学術誌に投稿中である。 このように、2点の研究を完成させ、投稿する段階まで持っていくことができたことは、当初の予定以上の進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で指摘した2本の論文は投稿中ではあるが、今後レフェリーおよび編集者の意向により、より多くの研究を補填的に行うことが求められると考えうる。また、25年度も複数の学会で発表させていただく予定であり、今後もより厳密で意義のある研究にするべく改訂を行っていく。また、同時に政策提言に関しても考察を重ねていく予定である。 同時に、世襲議員および議員の年功以外でも、多くの議論するべき議員の属性が考えうる。今後は特に女性議員や、マイノリティの議員に注目し、彼らの公共政策への影響を分析していく予定である。現在は、議員の個表データの整理や、分析手法の検討を行っている段階である。
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