2012 Fiscal Year Annual Research Report
中小企業の長期存続を可能にする関係構造と企業家精神の発現メカニズム
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24830108
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
曽根 秀一 大阪経済大学, 経営学部, 講師 (70634575)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 中小企業 / 老舗企業 / 企業家精神 / ビジネスシステム / 経営組織 / 存続 / 衰退 / 人材育成 |
Research Abstract |
1.平成24年度は、研究期間の初年度にあたるため、今後の研究の基礎となる文献研究及びフィールドワークの実施を中心に行い、下半期は論文作成、投稿を行った(現在査読中も含む)。 2.上記遂行にあたり、(1)これまで調査を行ってきた、老舗建築企業及びそれに関連した金剛組、竹中工務店、大彦組、安井杢工務店、石川工務所、西澤工務店、播磨社寺工務店などに加えて、未調査であった、大彦、藤兵衛、浅沼組、幸督興業、中村建設などに新たな調査を行った。また、これまで調査を行っている企業の新たな史資料の発見・収集・整理を行った。(2)上記で挙げた老舗建築企業に加え、他の中小老舗企業への調査を行いその存続を可能にする関係構造と企業家精神の発現メカニズムについて、インタビュー調査を複数行い、これらを明らかにしていった。(3)以上の文献研究/フィールドワークから得た成果は、『1からの経営学(第2版)』『大阪経大論集』『ファミリービジネス学会誌』などの学術誌へ投稿し、学会、研究会、シンポジウム等においても成果報告を行った。また、国内外の各研究者とも共同研究を盛んに行い、論文を投稿・公刊した。海外の研究者との共同調査なども含め、よりグローバルな視点からも研究がなされた(かつて、曽根が学生時代等留学した際の知遇を通じて、より充実した調査・研究を行うことができた)。 3.平成24年度上~下半期は、これまで実施してきた調査を継続しながら、老舗企業の存続を説明する理論的枠組みを再構築し、その成果をファミリービジネス学会やベンチャー学会、日本リスク研究学会および各種海外雑誌などの、本研究に関連する主要学会で、報告及び論文投稿を積極的に行い、これらの成果を次年度につなげていく。 平成25年度は最終年であるため、これらの蓄積されたデータ、業績を包括し本格的に成果報告していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究期間の初年度(平成24年度)において、当初の計画以上に、文献研究及び各中小企業へのフィールドワークを順調に行うことができた。また、複数の企業において、江戸期から昭和初期の史資料(収支簿、当主の手紙類)が思わぬところで大量に発見された。これらの史資料の調査、編集等を行わせていただくにあたり、数字のデータも含めこれまで不明であった点について明らかにすることができた。また、インタビュー調査を行い、より詳細に過去の状況を知っている過去の経営陣などへの紹介を協力的にしていただくことにより、本研究課題である「企業家精神」、「関係構造」、「意思決定」などのキーワードに関連した研究内容に広がりと深みを示すことができた。 さらには、これまで以上に国内外の研究者との共同調査・研究を通じて、国際比較、国際学会での報告、論文投稿など、国際的な広がりをみせることができたことも本研究課題において大きな収穫である。 以上の点からも2年目以降の研究の進展にさらに期待ができると考える。以上に挙げたようなより詳細な史資料やインタビューデータなどから、当初の計画以上に研究が進展していると指摘できる。 他方で平成24年度の課題をあえてあげるとするならば、思わぬところでのこうした広がりと深みをみせた研究であるため、調査・研究時間がより要されることとなり、急な出費と自身の時間の確保に困難がみられた。こうした時間の不足から平成24年度において行う予定であった調査対象企業への調査ができなかった点もある。このため、次年度(平成25年度)に持ち越しをして、早めに対応することを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、理論研究、インタビュー、一次資料調査等を行うため、多大な時間と費用がかかるという特徴がある。上記にも示したように、平成24年度も調査を進めるにあたり、急遽複数の企業において江戸から昭和初期にかけての貴重な一次資料が大量に発見された。また、インタビュー調査においてもすでに引退した方などの紹介など、確かな情報を得るため、複数の方々への調査を何日もかけて行った。 このため、予定より多くの追加のフィールドワークなどもあり、年度末には予算が不足するという事態に陥った。こうした限られた貴重な研究費をいかに最大限有効に使用していくか、より考慮する必要がある。予算の関係上、交通手段の選別や地域ごとにまとめて調査を行う必要もある。また、急遽の調査展開への対応など、予算同様に自身の時間の効率的な確保(学生などへの調査協力依頼など)にも注力していきたいと考える。 平成24年度は、調査を中心に時間を割いたが、平成25年度は最終年度でもあるため、調査・打ち合わせの時間も大事にしつつも、総括的な意味合いも含め、生産的に論文公刊等の成果報告を最優先に行い、学術界、社会に研究成果を発信していく予定である。 また、他の研究にも共通することではあるが、研究を行わせていただくマナーとして、貴重な史資料の扱いやインタビュー対象者への配慮(研究協力者等の個人名等、論文公刊前における事実確認や公表の確認など)を入念に行っていく。
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