2012 Fiscal Year Annual Research Report
大阪の市場主義的教育改革の検証:闘争のアリーナとしての学校
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24830117
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
前馬 優策 甲子園大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00632738)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 新自由主義 / 進路保障 / 高校入試 / 学区再編 / 進路指導 |
Research Abstract |
24年度は、大阪府の公立高校入試改革について、文書資料およびインタビューによる情報収集を行った。公立高校授業料無償化以降、大阪では私立高校の授業料においても世帯年収に応じて無償化を図ろうとしてきた。また、府内の進学校10校に文理学科を設置したり、前期入試として行われていた普通科総合選択制の選抜試験を後期入試へと変更したりした。その後、「府立学校条例」と「教育行政基本条例」の制定を経た24年度実施の入試では、全日制普通科で前後期とも選抜試験を実施された。さらに、25年度実施の入試では学区が撤廃されることになった。高校教員へのインタビューから明らかになったのは、こうした新自由主義的な教育改革に対して現場は抵抗してきたが、現在の改革のスピードの速さによって、抵抗の足場が切り崩されているという現状であった。加えて、毎年入学してくる生徒を前に、制度を内面化せざるをえない状況もあった。それに対し、これまで教育の市場化に抵抗してきた教員たちは、世代間ギャップの解消を通じて抵抗の足場の再構築を図っている。 では、実際の受験生は、高校入試制度の変更によってどのような影響を被っているのだろうか。高校教員へのインタビューからは、学力トップ層がより厳しい競争に身を置き、学力ボトム層が「強いられた選択」を行っている状況が浮かび上がってきた。従来の進路指導が必ずしも有効に機能しなくなってきている中で、実際の中学校ではどのように進路指導を行って(行おうとして)いるのか。この点について、さらに詳しく検討する必要があるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高校入試制度が新たに変更されたため、それに伴い計画の修正を行ったこと、それを反映して資料収集や文献研究に多くの時間を割いたことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた質問紙調査であるが、複数の学校関係者から文書に残る形の記入式調査では本音の部分に迫ることは難しいとの指摘を受けた。そのため、インタビューと公表されている高校進学関連のデータの分析を通じて、高校入試制度改革の影響が学校現場や受験生の進路選択に影響を与えているのかを明らかにしていきたい。 今後は、中学校の進路指導担当教員を中心にインタビューを行うとともに、各自治体の人権教育研究会の進路保障部会の取り組みについても調査を行うことにしたい。
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