2012 Fiscal Year Annual Research Report
星間分子雲における極低温表面原子反応によるアミノ酸の重水素濃集機構の解明
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24840001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (00507535)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 重水素濃集 / 星間分子雲 / 極低温表面反応 |
Research Abstract |
本研究では星間分子雲に存在する氷星間塵表面におけるアミノ酸およびその前駆物質の重水素濃集機構解明を目的としている。アミノ酸は代表的な地球外物質である炭素質隕石中で豊富に存在することが知られ,さらに地球上に存在するものに比べ,高い重水素濃集を示すことが知られている。その重水素濃集の起源として星間分子雲における極低温反応の関与が示唆されているが,これまでにそれを検証した例はなく,その解明に挑戦する本研究は画期的だといえる。 まず,極低温表面反応によるアミノ酸の重水素濃集に関する研究から着手した。当初の計画ではアミノ酸蒸着装置を自ら設計し,現有の装置を改良して取り付ける予定であった。しかし市販品でアミノ酸を真空装置内に設置された反応基板上に蒸着可能な装置を見つけた。そこで装置設計・改良等による時間のロスを防ぐため,北野精機製の有機物蒸着装置を購入した。その際,現有の装置と蒸着装置をマッチングさせるため,北野精機担当者との打ち合わせを念入りに行い,適切に装置を選択した。アミノ酸試薬の準備も完了しており,実験を開始できる段階まで到達している。 また,最も単純なアミノ酸であるグリシンと,重水素原子との反応による水素引き抜き―重水素付加が理論的に起こるかどうか,量子化学計算によって反応の活性化エネルギーを見積もった。2つの水素が結合するアルキル炭素から,重水素原子が水素原子を引き抜くために必要な活性化エネルギーはおよそ25kJ/molであった。この程度の大きさのエネルギーが必要な反応は,典型的な星間分子雲の温度である10ケルビン程度では熱的に起こりえないが,量子力学的トンネル効果によって進行可能だと推測する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究室の事情により実験室レイアウトを大幅に変更し,装置の移動とその後の装置の立ち上げに数か月を要したため。また,実験室の循環水設備の不良により実験室が浸水し,その復旧が順調に進まなかったことも大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験計画に従って研究を行う。予定よりやや遅れた現状をふまえ,実験前に実験条件を吟味し,効率よく成果をあげることを目指す。
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Research Products
(9 results)