2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24840008
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渡辺 究 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20638176)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ファノ多様体 / ネフな接束 / 等質多様体 / 有理曲線 |
Research Abstract |
平成24年度は交付申請書に記載した通り、Campana-Peternell 予想(以下、CP 予想)に関連する研究を行った。(CP予想:「ネフな接束をもつファノ多様体は等質多様体である」)CP 予想は森氏により解決された Hartshorne 予想の一般化である。4次元以下では、多くの研究者の寄与により CP 予想が正しいことが知られていた。しかし、5次元以上では一般に未解決であり、近年は大きな進展はなかった。そこで、5次元の場合の CP 予想を研究し、特に5次元かつピカール数が1より大きい場合に CP 予想が成り立つことを示した。この結果を論文 "Fano 5-folds with nef tangent bundles and Picard numbers greater than one" にまとめ、 "Mathematische Zeitschrift" への掲載が決定した。 CP 予想の最も重要な箇所は、「接束がネフ」という数値的な条件から「群の作用」と「等質性」をどのように導くかを調べることであろう。上記申請者の研究や今まで知られていた4次元以下の場合では、与えられた条件を満たす多様体を具体的に分類し、その分類の結果等質性が分かる、という証明であった。それらの議論は次元が低い場合にのみ適用出来る手法であり、一般次元でCP 予想を解決するには異なるアプローチが必要である。そこで、接束のネフ性からどのように群の情報を復元出来るか研究を行い、論文"Rational curves, Dynkin diagrams and Fano manifolds withnef tangent bundle"にまとめた。これは、R. Munoz, G. Occhetta, L. E. Sola Conde 三氏との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り、CP 予想の研究を行った。CP 予想の研究は近年大きな進展は見られなかったが、そのなかで二本の論文を執筆することが出来た。特に、CP 予想の解決に向けて論文"Rational curves, Dynkin diagrams and Fano manifolds withnef tangent bundle" は大きな一歩となることが期待される。先にも記した通り、「接束がネフ」という数値的な条件から「群の作用」と「等質性」をどのように導くかは今までの研究ではなされていなかったが、我々の研究により、完全旗多様体(半単純リー群のボレル部分群による商)に対応するような特殊な系列のファノ多様体(以下、FT 多様体)についてはこの点が概ね明らかになった。また、同論文では復元された半単純リー群が A 型のときに FT 多様体に対して CP 予想が成り立つことが示されている。これらの結果は今までの CP 予想に関連する先行結果とは異なり、一般次元での解決を期待させるものである。 交付申請書を書いた時点ではこのような手法には全く気付いていなかった。この一年で大きな進展を得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
FT 多様体に関する CP 予想について引き続き研究を行う。 既に FT 多様体の数値的条件から構成される半単純リー群が A 型, B 型, D 型, G 型の場合に CP 予想が成り立つことを示している。あとは、C 型, E 型, F 型 の場合にも示すことが出来れば、FT 多様体に対して CP 予想が成立することが示される。C 型の場合はシンプレクティック幾何の手法を用い、 E 型, F 型 の場合には Variety of minimal rational tangents の手法を用いることにより研究を行っていく。さらに、FT 多様体に対して CP 予想が成立することを示すことが出来れば、CP 予想の解決は次の問題に帰着される:「ネフな接束をもつファノ多様体は FT 多様体により支配されるか」。このステップではネフな接束をもつファノ多様体上の有理曲線の族を考えることにより研究を行いたい。これらの研究は、R. Munoz, G. Occhetta, L. E. Sola Conde, J. Wisniewski 四氏との共同研究である。
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