2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24840009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
權業 善範 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (70634210)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ファノ多様体 / カラビ・ヤウ多様体 / 大域的F正則多様体 / 大域的F分解多様体 |
Research Abstract |
ファノ型多様体とは、代数多様体に対する概念で、ある境界(因子)をもち、その対が川又端末特異ファノ対になるものを指す。この多様体は、いわゆる対数的極小モデルプログラムで得られる代数多様体の双有理的分類論における基本ピースの一つであり、その多様体自身の研究はとても価値がある。この研究目的はそのファノ型多様体の性質を明らかし、または特徴づけることである。今年度は特に次の問題をインペリアルカレッジロンドンのカッシーニ氏と共同研究で否定的に解決した。 「有理連結多様体はファノ型多様体と双有理同値か?」 「反標準因子がネフかつ動的ならば、ファノ型か?」 実は後者の問題は森ドリーム空間のときに、マッカーナン氏が証明したとされていた。しかし、我々は森ドリーム空間で後者の問題に対する否定的結論を得る例を得た。前者の問題はサルキソフプログラムと極小モデルプログラムを用いることにより例を構成することに成功した。さらに反標準因子との関係を調べた。これは今準備中である。 またファノ型多様体の研究ととても関係が深い正標数上の多様体「大域的F正則多様体」というのが存在する。こちらの研究も東京大学の高木俊輔氏と行っている。問題としては、「正標数還元を行った後、その多様体が大域的F正則多様体ならば正標数還元を行う前の多様体はファノ型か?」である。大域的F正則多様体は正標数上でのみ定義されるフロベニウス写像を用いて定義される。この問題について、森ドリーム空間の場合は肯定的に解決されている(權業・大川・三内・高木)。森ドリーム空間を仮定しない場合の曲面の場合は、大川氏により証明が知られていたが、我々はより幾何学的な証明を発見しさらに、「代数曲面が正標数還元を行った後、その多様体が大域的F分解的ならば正標数還元を行う前の多様体はカラビ・ヤウ型である」という結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた以外で、ボット・ダニロフ消滅定理がファノ型多様体では成立しないことが判明した。これはウォーリック大学の佐野太郎氏に教えてもらった。また、「ノンネフ基点集合がザリスキー閉集合か?」という問題に対して、今年度、実カルティエ因子に対してはこれは否定的な結論を得るプレプリントがレシトゥール氏により発表された。これは私が申請書に書いた一つの問題が、実カルティエ因子ではあるが否定的に解決されたことを意味する。以上のように当初の予定していた問題が次々に解決している。また正標数上の多様体との関係も大域的な場合は2次元の場合はおおむね満足のいく結論を得る事ができた。以上のように当初予定で取り組む問題が多数解決している。これは予定よりも短期でその結論を得ている事から「当初の計画以上に進展している」というべきである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究が順調なので、今後の方策も、現在の方針に従いながら研究を続ける。特に今後は3次元の研究に特化した研究を行う予定である。3次元の場合の「正標数還元を行った後、その多様体が大域的F正則多様体ならば正標数還元を行う前の多様体はファノ型か?」という問題にこたえるために、大域的F正則多様体の双有理幾何学を整備する。特に正標数3次元大域的F正則多様体の極小モデル理論の完成を目指す。それにより、3次元大域的F正則多様体が有理鎖連結であることと森ドリーム空間であることを証明しようと思う。さらに、一般次元の大域的F-分解多様体におけるコラール単射性定理を考えたいと思う。これらを用いて元の問題、「正標数還元を行った後、その多様体が大域的F正則(分解)多様体ならば正標数還元を行う前の多様体はファノ型(カラビ・ヤウ型)か?」に挑戦する。以上が今後の研究の推進方策である。
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