2012 Fiscal Year Annual Research Report
バイオメカニクスに基づく凹凸形態型腕足動物の初期進化
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24840018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
椎野 勇太 東京大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60635134)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 機能形態 / 進化 / 絶滅 / 適応放散 / 懸濁物食者 / 最適設計 / CFD |
Research Abstract |
古生代の海洋底で大繁栄を遂げた無脊椎動物の腕足動物は,周辺に生じた水流に身を任せて受動的に殻の内側へ水を引き込み,採餌や呼吸を行っていた.中でも凹凸形態型腕足動物プロダクタス類は,凸状に膨らんだ腹殻を底面に向けて海底に寝そべり,あらゆる方向から水を循環させることができる適応形態であることがわかっている.受動的な水流形成のためには,堆積物上に反り立つ殻前縁部の開口部と,底面付近に位置する耳開口部の間に生じる圧力差に依存する.まるで煙突様の機能によって生み出されるこの圧力差は,海底に寝そべる姿勢によって大きく変化してしまう.したがって,前縁部と耳を形づくる殻の縁辺部は,個体まわりの微妙な環境に応じて機能不全を起こさないような流体力学的特性を維持させなくてはならない.どのような経緯でこの機能性が誕生したのかを明らかにするために,凹凸形態種の祖先にあたるストロフォメナ類レプターナの形と流れの関係を流体力学的に検討した. 流水装置と中空殻模型を用いた流水実験の結果,レプターナの殻形態は,プロダクタス類で再現された受動的水流の形成機能と同様の役割を備えていたことがわかった.しかし流速が高くなると,堆積物上に反り立つような前縁部が大きな抵抗を生み,殻模型がひっくり返ってしまった.姿勢がひっくり返った凹凸形態種は,縁辺部が堆積物に突き刺さり,窒息して死亡するだろう.つまりレプターナの殻形態は,生息姿勢が不安定になってしまうジレンマを抱えながら,煙突様の水流形成機能を備えるように進化したと考えられる. 本研究によって,絶滅生物の初期進化を「形の機能化」から説明する兆しが見えてきた.機能化と多様性の関係をより深く理解するためには,殻の形づくりに秘められた可塑性が鍵を握るかもしれない.さらなる標本調査や形態解析の進展が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Reason
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Research Products
(5 results)