2012 Fiscal Year Annual Research Report
トレリ群の有理コホモロジーと写像類群の無限次元表現のねじれ係数コホモロジーの研究
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24840023
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
佐藤 正寿 岐阜大学, 教育学部, 助教 (10632010)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 写像類群 / トレリ群 / 群ホモロジー |
Research Abstract |
本年度は以下の項目について研究を行った。 (1)向き付け不可能曲面のレベル2写像類群の生成系とアーベル化、(2)トレリ群における森田-Mumford類の非自明性,(3)ハンドル体写像類群の2次ホモロジー群,(4)曲面の基本群の有理群環を係数にもつトレリ群のコホモロジー群。 (1)は、トレリ群がジョンソンフィルトレーションの1番目の部分群であるのに対して、modulo 2のジョンソンフィルトレーションの1番目の部分群である、レベル2写像類群に関して得られた結果である。廣瀬進氏(東京理科大学)との共同研究として、modulo 2 Johnson準同型をレベル2写像類群上に構成し、これを用いてこの群のアーベル化を決定した。またSzepietowskiにより与えられた生成系を改良し、生成系として最小個数のものを1つ与えた。 (2)については、(i,j)-森田-Mumford類がトレリ群で自明であれば、(i,j+1)-森田-Mumford類も自明であることなど、いくつかの基本的事実を整理した。また、トレリ群における3-サイクルの構成を試みたが、非自明なホモロジー類は得られていない。 (3)については、ハンドル体写像類群がハンドル体に埋め込まれた円板のなす複体へ作用することに着目し、この同変ホモロジーに関係するスペクトル系列の微分を計算した。 (4)については、自由群の自己同型群について、自由群の有理群環係数のねじれ1次(コ)ホモロジー群、および群環に自由群の1次ホモロジー群をテンソルした係数のねじれ1次ホモロジーを計算し、これらがすべて自明であることがわかった。また、曲面の基本群の群環を係数とする写像類群のコホモロジー群と、森田-Mumford類との関係を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
残念ながら、当初の予定であった有向曲面のトレリ群の3次コホモロジー群に関して意義のある結果は現在までのところ得られていない。現在までに行ったことはトレリ群の部分群において3-サイクルを構成し、(2,1)-ねじれ森田-Mumford類で評価することである。特にこの部分群として単位接ベクトルの2点配置空間に着目し、その群のある群拡大において3-サイクルを構成したが、非自明なサイクルを得ることはできなかった。 しかしそれ以外に、向き付け不可能曲面に関して、modulo2 ジョンソンフィルトレーションの1番目の部分群であるレベル2写像類群について、そのアーベル化を決定することができ、またハンドル体写像類群の2次ホモロジー群についても進展があった。 レベル2写像類群のアーベル化および生成系に関する研究については、今年度中にプレプリントを作成する予定であり、2013年度に行われる研究集会「Johnson homomorphisms」、「リーマン面に関連する位相幾何学」などにおいて発表する予定である。 ハンドル体写像類群の2次ホモロジー群についても、廣瀬氏と共同でハンドル体写像類群の2次ホモロジー群の計算を行い、スペクトル系列における微分の計算を3分の1程度終えることができた。今後この計算を進めることにより、2次ホモロジー群の位数の上からの評価が得られることが期待される。 以上の点から、トレリ群や写像類群自体の結果ではないが、それに類似する群においていくつかの結果が得られたことから、研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は特に(2)トレリ群における森田-Mumford類の非自明性に関して、(2,1)-ねじれ森田-Mumford類を評価する上で有用と思われる3-サイクルの構成を進展させることを考えている。Mess群、および、曲面上の単位接ベクトルの2点配置空間の群拡大など、いくつかの群において調べたが、これを進展させることで非自明な3次ホモロジー類を構成し、森田-Mumford類の評価を行いたい。 (3)ハンドル体写像類群の2次ホモロジー群に関しては、ハンドル体写像類群の作用する複体は、Wajnrybによるカットシステム複体と、McCulloughによるメリディアン円板複体の2種類が知られており、現在まではカットシステム複体に関して計算を行ったが、メリディアン複体に関しても計算を行い、両者を比較する必要がある。さらに別の方法として、Pitschにより群の表示を用いたその群の2次ホモロジー群を計算する方法が知られている。既にハンドル体写像類群の表示はWajnrybにより得られており、これを用いた上からの評価を試みることを予定している。また、2次ホモロジー群の位数の下からの評価を行う必要があるが、これは既知のハンドル体写像類群を含む部分群の2次ホモロジー群を行うことで調べたい。 (4)については、基本群の群環を係数とするコホモロジー群に関して添加写像が誘導する係数の間のコホモロジー完全列を調べると、森田-Mumford類の挙動が偶数次と奇数次で異なることがわかっており、これについてより詳細に調べたい。
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