2012 Fiscal Year Annual Research Report
実解析学に現れる種々の関数不等式と付随する変分問題への応用
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24840024
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
和田出 秀光 岐阜大学, 教育学部, 助教 (00466525)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 関数不等式 / 楕円型偏微分方程式 / 変分問題 |
Research Abstract |
平成24年度における研究計画の1つは、主に種々の関数空間におけるHardy型不等式またはCaffarelli-Kohn-Nirenberg型不等式の導出にあった。この方向性の観点において、我々は、スケール不変性を持つ対数型Hardyの不等式を構築することに成功した。元来、臨界Sobolev空間を特徴づけるHardy型不等式として、対数型特異性の重みを伴うHardy型不等式はよく知られているが、対数型であるが故に、不等式がそのスケール不変性を維持する形での対数型Hardyの不等式は知られていなかったと思われる。我々は、対数型でありながら、ある種のスケール不変性を持つHardy型不等式を導出した。同結果は、埼玉大学の町原秀二氏、早稲田大学の小澤徹氏との共同研究であり、Tohoku Math.J.に採録決定済である。また、平成24年度におけるもう1つの研究目的として、種々の関数不等式に付随する最小化問題(または最大化問題)を変分的に考察することを挙げた。このことは、対応するEuler-Lagrange方程式を介して楕円型偏微分方程式の可解性と密に関連する。実際、我々は臨界Sobolev空間上のTrudinger-Moser型の不等式に対して、その最大化関数の存在または非存在を考察した。Trudinger-Moserの不等式は、局所特異性を持つ臨界Sobolev空間に属する関数の指数的可積分性を保証する不等式として知られ、種々の同不等式に対する一般化がなされてきた。我々は、Adachi-Tanaka(1999)によって得られた全空間におけるTrudinger-Moser型不等式に対し、最良定数を達成する最大化関数の存在を証明した。同結果は、山形大学の中村誠氏、福島大学の石渡通徳氏との共同研究であり、 Ann.Inst.H.Poincare Anal.に採録決定済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、種々の臨界型関数空間における関数不等式の導出、及びそれらの不等式に付随する変分問題を通して、楕円型偏微分方程式の可解性に関する研究を主な研究目的に据えた。同研究目的を踏まえて、まず臨界Sobolev空間を特徴づける不等式として知られる対数型Hardyの不等式に関して考察を行い、対数型でありながらスケール不変性を保つ不等式の導出に成功した。同結果は、埼玉大学の町原秀二氏、早稲田大学の小澤徹氏との共同研究であり、Tohoku Math.J.に採録決定済である。また、Sobolev空間を一般化したSobolev-Lorentz空間を導入し、臨界Sobolev-Lorentz空間に対する対数型Hardyの不等式の導出を試み、その結果として、不等式に現れる指数に関し、対応する不等式が成立するための必要十分条件を与えた。同結果についても、埼玉大学の町原秀二氏、早稲田大学の小澤徹氏との共同研究であり、国際雑誌に投稿中である。もう1つの研究目的として関数不等式に付随する変分問題の考察があるが、臨界Sobolev空間の指数的可積分性を保証するTrudinger-Moser型不等式に対し、対応する最大化問題を考察し、同不等式の最良定数を達成する最大化関数の存在を証明した。同結果は、山形大学の中村誠氏、福島大学の石渡通徳氏との共同研究であり、 Ann.Inst.H.Poincare Anal.に採録決定済である。平成25年度においても、関数空間上の不等式及び楕円型方程式の関連性を変分解析を通して研究していきたいと考える。平成24年度においては、研究目的に照らして一定の結果を得ることができ、研究課題は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、これまでに研究した関数不等式、特に、Sobolev-Hardy型不等式、Trudinger-Moser型不等式及びBrezis-Gallouet-Wainger型不等式等の関数不等式に対して、その最良定数に付随する変分問題を主要な研究テーマとしたい。特に、最良定数を達成する最小化関数(または最大化関数)の存在は、対応するEuler-Lagrange方程式の正値解の存在を意味し、変分問題として記述される最小化問題の研究は、非線形楕円型方程式の解析に有益である。例えば、我々はこれまでSobolev-Hardy型不等式またはBrezis-Gallouet-Wainger型不等式に対して、不等式に対する最良定数を達成する最小化関数の存在、非存在を研究してきた。一方、Sobolev不等式の臨界ケースまたはBrezis-Gallouet-Wainger型不等式の双対に位置する不等式として指数型不等式であるTrudinger-Moser型不 等式が存在し、同不等式の最良定数に付随する変分問題を今後の研究計画として組み入れたい。具体的に、通常のTrudinger-Moserの不等式は、臨界Sobolev空間に属する関数の指数型可積分性を保証する不等式であり, Trudinger、Moserらによって最良定数と共に導出された。また、同不等式の最良定数を達成する最大化関数の存在がCarleson-Chang、Flucher、Linらによって証明されている。他方、同不等式は、領域及び関数空間の一般化等、様々な意味において拡張された不等式が知られている。我々は、これら拡張された不等式に対しても不等式に付随する最大化問題を考察し、楕円型方程式の解析を進めたいと考える。
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