2012 Fiscal Year Annual Research Report
海底堆積物の環境プロキシと海水環境の相関-古環境の定量的復元を目指して-
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24840028
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北場 育子 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60631710)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 定量的古環境復元 / 海水環境 / 気候 / 微化石分析 / 変換関数 / モダンアナログ / 化学分析 / 大阪湾 |
Research Abstract |
研究結果をすべての人が受け入れやすい形で発信することは、我々科学者にとって重要な責務であると同時に、困難な課題でもある。本研究では、微化石データを塩濃度や水深、気温や降水量といった物理量に正しく変換することを目指して定量的古環境復元のための基礎研究を行っている。 1.大阪湾の海水環境・沿岸からの距離などさまざまな環境をカバーする調査地点(全39点)において、秋季・冬季の海水観測を行った。このうち32地点で長さ約30cmの表層堆積物コアを採取した。また、淀川から沖合に向かう測線上で、表層水中の珪藻を採取した。これらの試料については、現在、珪藻分析を進めている。次年度の春季・夏季の海水観測および堆積物の化学分析が終わり次第、データ解析を行う。 2.堆積物コア表層部の花粉分析を行い、気候シグナルと気候以外のシグナルを分離することを試みた。主成分分析の結果、堆積過程を反映していると考えられる大阪湾の表層花粉のばらつきを第1主成分として検出することができた。表層花粉データセットで認定した主成分座標系に、大阪湾の化石花粉群集をプロットすると、第1主成分の変動を示すカーブは、氷期・間氷期に対応した変化を示した。第1主成分を取り除いて過去の気候を復元しても、過去の気候イベントを検出することが可能であることを確認した。 3.花粉データを用いた定量的植生復元では、植生が正しく復元できた。一方、気温の復元値は全体的に低く復元された。 4.大阪湾堆積物の年代モデルを作るため、ダラム大学でPb210・Cs137法を用いて年代を測定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海水観測・プランクトン採取に関しては、予定通りに行うことができた。冬の悪天候により、39地点中、3地点で堆積物採取を行うことができなかったが、次年度の早い段階で試料採取を完了できる見込みである。分析は、順調に進展している。花粉分析とそのデータ解析については、計画以上の進展が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、春季・夏季の海水観測を行い、堆積物コアの採取と微化石分析、化学分析を完了する。統計解析を行い、各プロキシの空間分布を決める環境要因を明らかにすると同時に、堆積物の環境プロキシと海水組成データから、微化石データを物理量に変換するための変換関数を得る。加えて、大阪湾の表層堆積物で認定した主成分軸を除くことで気候の復元精度が向上するかどうか検証する。また、210Pb210法・137Cs法により堆積物に年代を入れ、人間活動の影響が少ない時代の層準を特定し、人為的な植生攪乱のシグナルを分離できるかどうか、この層準のデータが表層堆積物の代替データセットとなるかどうか、検討する。
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Research Products
(3 results)