2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24840035
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩尾 慎介 青山学院大学, 理工学部, 助手 (70634989)
|
Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
Keywords | トロピカル幾何 / 超離散可積分系 / 代数曲線 |
Research Abstract |
本年度の主な研究成果は以下の2つである。1、非周期的な超離散可積分系の初期値問題の解を、トロピカルKricheber construction により構成した。2、(2+1)次元の超離散可積分系を構成し、その初期値問題の解が1 と同様の手法で得られることを証明した。 1 について: 離散可積分系のある特殊な極限を取って得られる離散力学系のことを、超離散可積分系という。ある種の超離散可積分系に対しては、離散可積分系の強力な研究手段として知られるKrichever construction (または代数幾何的解法)に類似した方法(トロピカルKrichever construction)で初期値問題が解かれることが知られている。本研究では、非周期的超離散KdV方程式(箱玉系)のソリトン解をトロピカルKrichever construction により導いた。この際、「特異トロピカル曲線」の概念が自然に導出された。この特異トロピカル曲線は、いわゆる「トロピカル曲線のsmoothness」とは関係のない概念であるという意外な結果を得た。 2 について: (2+1)次元の離散KP方程式に対応する超離散系として、「2次元箱玉系」を構成した。過去にも箱玉系の2次元版はいくつかの異なる方法で導かれているが、この2次元箱玉系は、2次元空間を走る浅水波の偏微分方程式の、直接の超離散化となっている点に特徴がある。周期境界条件のもと、1 と同様の方法でこの系の初期値問題の解を与えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特異トロピカル曲線の概念を適切に定義することによって、特異点を持つトロピカル曲線に対応する超離散可積分系を構成した。それは、周期的とは限らない超離散可積分系のソリトン解として実現された。また、同様の手法の高次元化にも成功した。 以上の成果を踏まえると、当初研究目的にある「種々の超離散可積分系の初期値問題を解く」という方面の研究は、一定の進展をみたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、様々な超離散可積分系の解空間の解析は、トロピカルKrichever consatuctionによって成功することがわかってきた。この一連の結果をもって、「個々の超離散可積分系の初期値問題を解く」という方面の研究は一段落したと考える。 これからは個々の方程式を研究するのではなく、「可積分性そのもの」とトロピカル幾何との関係の解明に取り掛かりたい。超離散可積分系にトロピカル幾何を応用できた最大の理由として、可積分系のtotal-positivity が挙げられる。これは量子群のstandard basisの理論(特に偏屈層を用いた量子群の幾何学的構成)、クラスター代数のcategorification の理論などに密接に関係する概念で、同時に「可積分系とは何か」という問題にも深い洞察を与えるものである。 一方トロピカル数学とは、考えている系のpositivenessそのものを扱う数学である。可積分性とトロピカル数学には根源的な関係があると期待する。 これらの関係の解明のための第一歩として、以下の2つの研究に取り掛かる:1、超離散可積分系の結晶基底を用いた定式化およびKKR理論と、トロピカルKrichever constructionの間の標準的な対応を見つける。2、Qiiverを用いた量子群、結晶基底の構成と、トロピカル曲線(上の何らかの構造)との間の標準的な対応を見つける。
|
Research Products
(2 results)