2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24840043
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
三竹 大寿 福岡大学, 理学部, 助教 (90631979)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ハミルトン・ヤコビ方程式 / 弱結合型連立方程式 / 長時間挙動 / 均質化理論 / 弱KAM理論 / 最適切替コスト問題 / 退化粘性ハミルトン・ヤコビ方程式 |
Research Abstract |
本年度は,Hamilton-Jacobi(HJ)方程式の弱結合型連立方程式,及び,一般に退化しうる(線形的)粘性項を持つHJ方程式(退化粘性HJ方程式)について,数学の基礎研究(粘性解理論,弱Kolmogorov-Arnold-Moser(KAM)理論)を進める目的で以下の通り実施した. 研究1.複数のラグランジュ関数を考え,確率的要素から決まる切替を考慮した変分問題又は最適制御問題を考察した.このコスト汎関数は,ジャンプ型伊藤の公式を使う事で,HJ方程式の弱結合型連立方程式の解である事が形式的に分かる.動的計画原理が成り立つ事を利用して,粘性解の意味で正当化される事を示した.この事を利用して,均質化問題と長時間挙動の研究に活用し,単独方程式には見られない連立方程式特有の現象(初期層の発生,有効的ハミルトニアンの性質)を発見し,その精細な解析を行った.今後,同連立方程式に対する弱KAM理論,エルゴード問題の解の力学的構造理解への発展が期待できる. 研究2.近年,(一階)HJ方程式,粘性HJ方程式の解の長時間挙動はそれぞれ盛んに研究されてきた.それぞれの初期値問題の解は十分に時間が経った時,進行波解に一様収束する.対応する定常問題(エルゴード問題)の解の一意性に関する決定的な違いから,その証明方法は全く異なるものであった.そこで,これらを統一的に研究する新しい方法論の確立を目指した.その結果,退化粘性HJ方程式に対する,解の長時間挙動について解明する事に成功した. 研究実施計画通り,平成25年3月に,シカゴ大学,ピッツバーグ大学(アメリカ)を訪問し,共同研究者と議論を行う事で研究促進に努めた.また,研究実施計画に記述した研究集会に予定通り参加し,研究発表を行った.研究集会の参加者と生産的な討論を行うことができ,且つ,最新の情報を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Hamilton-Jacobi(HJ)方程式の弱結合型連立方程式の漸近問題に関する解析は,計画では平成24年度において均質化問題,平成25年度において長時間挙動の解決を期待していた.しかし,実際は平成24年度までに,解の長時間挙動に関する精細な結果も得る事ができたため,当初の計画以上の進展が得られたといえる.また,一般に退化しうる粘性項を持つHJ方程式に関する研究も進んだ.これらも当初計画している以上の結果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
Hamilton-Jacobi(HJ)方程式の弱結合型連立方程式のエルゴード問題の解に関する理解を深めたい.そのため,単独方程式において,解の力学的構造やその深い性質について先駆け的な結果を与えた,Antonio Siconolfi教授(ローマ大学)を訪問する事を計画している.また,一般に退化しうる粘性項を持つHJ方程式に関する研究の更なる進展を計画している.具体的には,時間周期的HJ方程式や退化粘性HJ方程式の境界値問題の長時間挙動のほか,平均場ゲーム理論,非線形拡散問題,スカラー保存則方程式,放物-双曲型方程式への応用に期待できる.これらの一部は共同研究であるため,共同研究者の訪問や招待をすることで,研究の促進を図りたい.
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Research Products
(18 results)