2012 Fiscal Year Annual Research Report
太陽系外惑星の精査に向けた赤外線天文衛星搭載コロナグラフの開発
Project/Area Number |
24840049
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
櫨 香奈恵 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 独立行政法人宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50635612)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 光赤外線天文学 / コロナグラフ / 次世代赤外線天文衛星SPICA |
Research Abstract |
太陽系外惑星の直接観測は重要な研究テーマである。しかし、主星光と惑星光のコントラストが極めて大きいため、コロナグラフという特殊な光学系を開発する必要がある。申請者は現在、バイナリ瞳マスク方式のコロナグラフの研究開発を進めており、将来的には、これまでに可視光波長域での原理検証実験で得た成果を発展させ、実際の望遠鏡に搭載したいと構想している。そのためのプラットフォームとしては、次世代赤外線天文衛星SPICAを志向するのが最も有効と判断した。そこで本研究における目標を、SPICA 搭載コロナグラフを実現するため、これまでに類例のない、中間赤外域での高コントラスト実証実験、とする。 平成24年度では特に、極低温真空チャンバーおよび内部に納める実験系の開発、が大きな柱であった。中間赤外域で高コントラストの実証を志向する場合、熱輻射による膨大なバックグラウンドを回避するため、実験系全体を極低温( ~ 5K) に冷却する必要がある。そのための極低温コロナグラフテストベッド(PINOCO:Prototype-testbed for Infrared Optics and Coronagraph) の開発を進めた。PINOCO の外枠には除振台で支えた大型( 1.5× 1.5 × 0.5m ) の真空チャンバーを用いる。冷却には、機械式 GM冷凍機(住友重機製 SRD208)を利用し、5K 以下の極低温環境を実現した。PINOCO内部の光学系には、アルミ製軸外し鏡のコロナグラフ光学系を開発した。コロナグラフの方式としては、これまでの可視域での検証実験の成功を受け、金属薄膜による(基板を用いない)自立型瞳マスクを選択した。実用化に向けた新しいデザインの自立型リング瞳マスクの可視光実験では、系外惑星の赤外観測における要求を満たすコントラストを実証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
太陽系外惑星の直接観測という重要で挑戦的な課題に向け、本研究における目標を、SPICA 搭載コロナグラフを実現するための、これまでに類例のない、中間赤外域での高コントラスト実証実験、と設定した。それに向けた平成24年度の取り組みは主に、可視光波長域から(より惑星観測に適した)赤外波長域に拡張するための極低温真空チャンバーおよび内部に納める実験系の開発、であった。具体的には、これまで可視光実験で用いてきたレンズ光学系に代えてアルミ製軸外し鏡を選定し、検出器に最適化したF 値を計算し、PINOCO用のアルミ製軸外し鏡のコロナグラフ光学系を開発した。これにより中間赤外域でもレンズ材料の問題(色収差、多重反射など)の問題から開放され、波長によらず有効な光学系となった。さらに、これまでの原理実証で用いてきた自立型コロナグラフマスクの開発成果を踏まえ、実用化に向け我々がSPICA搭載用に提示した「自立型リング瞳マスク」を新たに製造開発した。それを用いた初めての可視光実証に成功し、広い範囲(6-23λ/D:λは観測波長、Dは望遠鏡口径)で5桁~6桁の高コントラストを得た。これにより、赤外域で系外惑星を観測するための要求を満たすコントラストを実証することができた。以上のように、赤外実験に向けた実証開発が着実に進んでいることから、研究の目的に沿っておおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
SPICA搭載コロナグラフを実現するため、これまでに類例のない、中間赤外域での高コントラスト実証実験をおこなう。平成25年度では特に、これまで開発を進めてきた、極低温真空チャンバーを用いた中間赤外コロナグラフの実証実験、が大きな柱となる。コロナグラフの方式としては、これまでの可視域での検証実験の成功を受け、瞳マスク方式を選択する。ただし、これまで可視域の実験で成功を収めてきたマスクデザインは、原理検証用であったため、実際の望遠鏡に搭載する際にコントラスト性能を悪化させる副鏡やその支持機構による遮蔽を考慮していなかった。そこで実用化に向けた新しいデザインで、銅、アルミ、ニッケル等を材料とし高精度の電鋳法などを適用することで、金属薄膜による(基板を用いない)自立型瞳マスクを開発する。 平成24年度に開発を進め、さらに平成25年度にエレキ系の構築を完了させたPINOCO を用いて、新しい自立型瞳マスクを導入した真空低温中間赤外コロナグラフの世界初の性能評価をおこなう。実験結果と数値シミュレーションと突き合わせて実験時における波面誤差を逆算し、誤差要因について考察し、徹底的な改善を行う。その結果、SPICAに搭載するコロナグラフの原理実証が完了する。世界発の中間赤外コロナグラフの実験結果を、平成25年度のできるかぎり早い段階で論文にまとめる。このコロナグラフ実験によって得られた結果と、地球近傍にある星についての情報を合わせて、SPICA コロナグラフのサーベイ戦略の最適化などのサイエンス検討をする。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] A laboratory experiment for a new free-standing pupil mask coronagraph2012
Author(s)
Haze, K. ; Enya, K.; Kotani, T.; Abe, L.; Nakagawa, T.; Matsuhara, H.; Sato, T.; Tamamuro, T.
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Journal Title
Space Telescopes and Instrumentation 2012: Optical, Infrared, and Millimeter Wave. Proceedings of the SPIE
Volume: vol. 8442
Pages: pp.15
DOI
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