2012 Fiscal Year Annual Research Report
発光性メカノクロミズム特性を示す金イソシアニド錯体の合理的分子設計
Project/Area Number |
24850001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関 朋宏 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (50638187)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | メカノクロミズム / 金属錯体 / 光励起発光 / 有機化学 / 結晶 / 結晶多形 / 光学特性 / 金錯体 |
Research Abstract |
発光性メカノクロミズム現象とは、機械的な刺激によって可逆的に発光特性を切り替える現象である。センサーや新規記録材料に応用可能であると期待され、近年その研究報告例が増加傾向にある。一方では、メカノクロミズム現象のメカニズムに関しては未解明な点も多く現象の発現そのものが偶然の発見に依存しているのも事実である。そのため、基礎的な知見を蓄積し合理的な分子設計指針に基づいてメカノクロミック分子の創出に成功すれば、当該分野の発展が大いに期待できる。当研究室では2008年にメカノクロミズム現象を示す新規金(I)イソシアニド錯体誘導体を報告している。しかしながら、この錯体の発見も偶然に達成されたものであり、メカノクロミズム現象の発現の鍵となる分子骨格や発光特性が変化するメカニズムに関しては未解明な点が数多く残されていた。 このような背景のもと、申請者は発光性メカノクロミズム特性を示す金(I)イソシアニド錯体の分子骨格とその発光及びメカノクロミズム特性の関連を体系的に調査し、メカノクロミック分子の合理的分子設計指針を打ち立てることを目的とし研究を開始した。初年度、申請者がもっとも力を注いだのは入手容易な合成前駆体から誘導される新規金イソシアニド錯体をできるだけ多く合成し、その物性をスクリーニングすることである。特に電子吸引性・供与性置換基の導入によるメカノクロミズム現象への影響を精査した。現在のところ、電子的パラメータとメカノクロミズム現象の発現の有無に関して明確な相関は得られていない。 一方では、基質許容性の高い金(I)イソシアニド錯体の新規合成法を確立することができた。これまで困難であったカルボニル基を有するpi共役系への金原子の導入が可能となり、更に多くの誘導体の合成が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金(I)イソシアニド錯体の分子骨格とメカノクロミズム特性の相関を見出し、一般的なメカノクロミック材料創出のための合理的分子設計指針を打ち立てることが本研究の主たる目的である。これに関しては、上述の通り当初の予定より遅れをとっている。しかしながら、この過程で多種誘導体の合成→その物性評価という一連のフローを迅速に処理することが可能となり、予想もしていなかったような興味深い現象を発見した。例えば、ベンゾチオフェニル基を有する金(I)イソシアニド錯体が白色発光を示すことを見出した。これは、複数の結晶構造がミクロスケールで共存していることに由来しており、白色発光を得る手法としては前例がない。これらの成果についてはすでに論文2報にまとめ投稿済みであり、その審査結果が待たれている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは置換基の導入により分子の電子状態を変化させていた。一方、来年度はヘテロ原子や典型元素をpi共役系そのものに直接導入することで電子状態の制御された新規金(I)イソシアニド錯体の合成を試みる。共役系に直接分子修飾を行うことで、分子表面の形を大きく変えることなく電子物性を変化させることが可能である。前年度の結果も含め機能-構造特性の相関に関してより詳細に精査する。特定の相関関係を見いだすことができたら、それに基づきメカノクロミズム特性の発現や発光波長の変化に必須の分子骨格を突き止める。更に、合理的な分子デザイン基づき新規メカノクロミック分子の開発に取り組む。
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Research Products
(4 results)