2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規サーモクロミック無機材料の開発と精密構造解析によるメカニズムの解明
Project/Area Number |
24850009
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 孝太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30635123)
|
Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
Keywords | 金属酸化物 / 結晶構造解析 / 電子密度解析 / 粉末X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、サーモクロミズムを示す新規の金属酸化物材料の開発とそのメカニズム解明を行うことを目的としている。固体物質の性質は、その結晶構造によって変化するため、結晶構造の設計・制御することは、材料開発において最も重要なことである。金属酸化物の構造を決定する要因として、構成原子のイオンサイズや原子間の共有結合性などがある。これらの要因を深く理解することで、既存の構造やそれに伴う物性を理解することができ、さらに新規の構造設計を行うことができる。 構成原子のイオンサイズと構造の関係については、古くから調べられているものの、未だ明確になっていない部分も多い。平成24年度は、特に近年注目されているK2NiF4型の構造を有するAA’BO4の組成に注目し、イオンサイズの違うAとA'金属元素を選択することで、これまでに報告のない新規構造型を有するペロブスカイト関連物質の合成に成功した。放射光X線結晶構造解析と、中性子結晶構造解析を組み合わせることで、未知の結晶構造を正しく解析することに成功している。また、新規合成に成功した物質の中には、可視領域への吸収があるものもあり、相転移などによりサーモクロミック材料への応用も期待される。 また、金属酸化物における共有結合の重要性を明らかにするため、変位型強誘電体物質について、放射光X線回折データに基づく電子密度解析から、金属-酸素間の共有結合について実験的に明らかにすることに成功した。 このように結晶構造の本質に迫る知見が得られたことは、さらなる材料開発の重要な指針につながる結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、金属酸化物における金属-酸素間における共有結合性について明らかにすることに成功し、また、金属酸化物の構成原子のイオンサイズに注目することで、新規の金属酸化物を合成することに成功した。構造を決める要因を明らかにできたことや、戦略的に新規の構造を有する材料の開発に成功したことは、次世代の材料開発に対する重要な指針となると考えられる。構造形成のメカニズムの解明や、新規構造の作成には成功しているが、サーモクロミズムの挙動について、詳細を明らかにすることには至っていない点が今後の課題となっている。新規の構造を合成することに成功したことは、大きな成果であり、新規材料開発の観点で、本研究課題の目的の半分は達成できていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
新規の構造型を有する物質を作成するうえで重要なことは、イオン半径の違いであることが明らかとなった。この観点から、新しい構造を有する物質の探索を急ぎ、それに並行してこれまで合成に成功している新規構造を有する物質について、サーモクロミズムの挙動を熱分析や可視・紫外分光測定などから明らかにしていく予定である。また、新しい構造であることから、可能であればサーモクロミズム以外の物性、たとえば電気伝導性やイオン伝導性、強誘電性などの物性についても調べていく予定である。
|
Research Products
(5 results)