2012 Fiscal Year Annual Research Report
色素増感太陽電池の高効率化を目指した7員環構造を基盤とする機能性増感色素の開発
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24850016
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
橋本 雅司 城西大学, 理学部, 准教授 (10635428)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 増感色素 / 非ベンゼノイド / 太陽電池 |
Research Abstract |
色素増感太陽電池は、製造コストに優れることから次世代太陽電池として期待されている。しかしながら、現状の光電変換効率は期待される値の1/3程度しか達成されておらず、さらなる高効率化が望まれている。色素増感太陽電池の発電プロセスは増感色素が太陽光により励起され分子内で電荷分離状態を作り電極材料に電子を注入することから始まる。そこで本研究では、これまで検討されてこなかった電荷分離構造と電極材料への電子注入の効率を向上させる増感色素による光電変換効率向上の検討を行い増感色素の新しい設計指針を見出すことを目的としている。 本研究では、以下に述べる2つのアプローチによって光電変換効率向上のための増感色素の設計指針を見出す計画である。(1)増感色素中に電荷分離構造を導入し増感色素の物性と光電効率変換効率の評価。(2)酸化チタンへのリンカーとしてトロポロンリンカーの特性評価。 本年度は、上記(1)及び(2)の材料設計を量子化学計算を用いて行い並行して物質合成を重点的に行った。また、量子化学計算は、Gaussian 09を用いた。設計したDonor-π-Acceptor(D-π-A)型分子の基底状態の構造最適化とTD‐DFTによる励起状態計算を200種以上行い、材料のHOMO-LUMO準位、吸収波長、遷移モーメントのデータから合成ターゲットを決定した。色素分子のアクセプター部分に7員環骨格のトロポン骨格を導入した材料の合成と合わせて7員環導入の効果を検証するために、並行して類似した6員環化合物としてベンゼン誘導体、5員環化合物としてチオフェン誘導体の合成も行った。本年度の計画は、材料設計と合成が主であり、計画は、おおむね順調に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、材料設計と材料合成を重点的に行う計画であり、研究計画は、おおむね順調に進行している。 初めに、これまでに太陽電池デバイスとして評価されている増感色素分子と、新規にデザインした分子に関してGaussian 09を用いた量子化学計算を行った。 TD‐DFTによる励起状態計算を200種以上行い、材料のHOMO-LUMO準位、吸収波長、遷移モーメントのデータから合成ターゲットを決定した。 また、分子設計自由度の高いDonor-π-Acceptor(D-π-A)型分子を基本材料として増感色素中に7員環構造を含む分子と、検証用の比較化合物を設計し合成を進めた結果、評価用の色素合成は、ほぼ完了している。また、合成された化合物に関しては、溶液中での可視紫外吸収スペクトルとサイクリックボルタンメトリーによる酸化電位を測定し、色素材料の吸収波長、バンドギャップ、HOMO-LUMO準位を見積もった。また、これら結果を計算値との比較検討を行ったところ、絶対値は一致していないが傾向と序列は一致していることが確認できた。今後は、この差分を加味することで、より精度の高い分子設計を行えると期待できる。 24年度に合成したD-π-A)型分子の合成と物性に関して日本化学会 第93回 春季年会にて報告(ポスター1件)を行った。 また、酸化チタンへのリンカーとしてのトロポロンを導入する分子に関しても分子設計を完了し、合成を進めている。これまでのところ材料合成はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は材料合成に加え合成された色素に関して太陽電池特性の評価も推進していく。太陽電池の作成及び評価方法、評価設備に関しては同所属の研究協力者の協力の基、遂行していく。 初めに、研究協力者のもとで、既存材料を用いた太陽電池素子を作成、評価し安定した素子作成技術を確立したのちに、本研究の合成材料に関して評価を行う計画である。 また、材料評価と並行して、新しいリンカーとして7員環構造を持つトロポロンを含む増感色素の合成を行う。トロポロンは配位能を有する含7員環化合物であり、7員環構造から電子を配位金属側に押し出す効果が期待されるため、電子の注入効率が高い新しい機能を有するリンカーとして期待できる。7員環構造導入の効果を検証するために、並行して類似した6員環化合物を合成し、物性の比較を行う。類似した6員環化合物としては、トロポロンの構造異性体である、安息香酸、サリチルアルデヒドについて並行して合成を行う。現在報告されている酸化チタンへのリンカーのほとんどがカルボキシル基であり、トロポロンやサリチルアルデヒドのようなこれまでにないリンカーの太陽電池特性への影響を検証することで、リンカーユニットの新しい分子設計指針がえられると期待でしている。これらの酸化チタンへのリンカーとしての評価も、材料物性、量子化学計算の結果、太陽電池特性を総合して評価を行っていく予定である。 また、上記検討によって得られた結果を考察、評価し、外部発表を行っていく予定である。
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