2012 Fiscal Year Annual Research Report
金ナノクラスターの反応性を活かした環境調和型炭素-炭素結合形成反応の開発
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24850019
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
杉石 露佳 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, IMSフェロー (30636220)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 金ナノクラスター / 空気酸化 / オキサゾロピリジノン / プロパルギルアミン誘導体 |
Research Abstract |
有機合成プロセスの開発において、廃棄のない手法は環境保護の観点から重要である。当該研究は、金ナノクラスター触媒の「空気中、室温、塩基性溶液中において高活性である」特徴を活かし、原子効率のよい炭素-炭素結合形成反応の開発を行うことを目的とする。 昨年度の研究過程において、この目的に沿った2種の複素環合成が見出された。 一つ目は、金ナノクラスター存在下、空気中でプロパルギルアミンとプロピオンエステル誘導体をエタノール溶媒中にて還流させニコチン酸エステル誘導体を得る反応である。金ナノクラスターにより反応が加速されることにより、温和な反応条件下にて入手が容易な出発物質からの合成が可能となった。 二つ目に、空気中、金ナノクラスター触媒存在下、エタノール溶媒中でアセトアセチル保護されたプロパルギルアミンを加熱すると、オキサゾロピリジノン骨格を有する生成物が得られることが見出された。この系中にて、溶媒に用いたエタノールは酸化されてアセトアルデヒドとなり、プロパルギルアミン誘導体と反応した可能性が高い。以前に他の研究グループが報告した3価の金触媒による反応においては、そのルイス酸性が利用されていた。本環化においては、金クラスター触媒がルイス酸としての働くだけではなく、空気酸化を駆動力として反応を進行させていると考えられる。 今後、これらの反応を様々な基質に適用させることができれば、新規複素環化合物の合成法を確立できると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
原子効率のよい有機合成プロセスの開発として当初着目していた反応はCDC(Cross-Dehydrogenative Coupling)であった。しかし、その研究過程において、さらに新規な環境調和型の反応が見出され、それらに研究の対象を移行したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本環化反応のメカニズムを明らかにするために、まずは様々な基質を同条件下において作用させ、同様の反応が進行するか否かを調べる。殊に、生成物の骨格に導入されたそれぞれの炭素原子が系中のどの化合物に由来するかに注目し、出発物質の置換基を変化させることにより反応機構を調べる。また、これらの反応において金ナノクラスターのもたらす加速効果や触媒作用について明らかにし、反応機構の考察を行うことにより、収率を向上させ、一般的基質を用いた有機合成における新規複素環化合物の合成法への適用拡大を目指す。
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