2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24860006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古澤 卓 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (80637710)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 超臨界流体 / 数値解法 / 連続水熱合成 / 前処理法 |
Research Abstract |
本研究で対象とする超臨界流体の三次元解析において大きな問題となるのが熱物性値評価の計算時間である.臨界点近傍では密度や定圧比熱,定積比熱,熱伝導率,粘性係数,音速などが大きく変化し,その正確な評価が非常に超臨界流体の流動解析において重要である.これまでに提案してきた数値解法では熱物性値変化をPROPATHに定義されているビリアル型の状態方程式を用いた方法では数十項からなる多項式を計算する必要があるために莫大な計算時間を必要とした.これは全体の計算時間の8割から9割を占めており,大規模三次元計算を行う上で非常に大きな問題であった.本年度はまず大規模計算に特化した部分細分化参照テーブルを用いた熱物性値評価方法を提案した.提案した手法では部分細分化参照テーブルを用いおり,東北大所有のSX-9にてベクトル化率大きく向上させ,計算時間の大幅な短縮をできることが分かった. 連続水熱合成では常温水溶液と超臨界水の混合によって微粒子を析出させるため,臨界点近傍の特異な流動の解明が必要となる.上記の数値計算コードおよび反応,粒子生成モデルを用いて連続水熱合成におけるT字管路および対向流型管路の反応器内部流動の二次元解析を行った.特に対向流型管路の解析では実際に使用されているいくつかの管路内部の流動解析を行い,超臨界管路の出口付近にて微粒子が生成されていることを示した. また,三次元流動解析コードの開発を行い,上記の部分細分化参照テーブルによる熱物性値算出手法と合わせて用いることで実用的な数値計算ができることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は数値流体力学と化学工学の分野融合領域であり,これまでの数値計算手法ではシミュレーションができなかった化学反応器内の超臨界流体の流動の解明を行うものである.特に本研究では超臨界流体の圧縮性および熱物性値変化を正確に考慮することで既存の数値解法よりも正確な流動の再現が可能となる.本年度は三次元流動解析に向けて大規模計算に特化した部分細分化参照テーブルを用いた熱物性値評価方法を提案および三次元解析手法の提案を行うことができ,順調に推移したと言える.また,T字管路および対向流管路における二次元流動解析を行い,粒子の生成位置を特定した.これはこれまでに明らかにされていなかったことであり,本手法を用いて初めて明らかになったことである. また,国内外の化学工学の研究者との意見交換も実施した.今後は化学工学のグループから実験による管路の可視化データの提供を受け,実験による可視化結果との比較を行うことで計算結果の妥当性を検証する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では東北大学所有のベクトル計算機SX-9を使用するために,大規模計算にむけて並列化率およびベクトル化率の改善が必要となる.これまでもベクトル化率改善のための改良等を行っているものの,より効率のよい数値計算に向けて引き続き改善を行っていく.その上で,構築した超臨界流体の三次元流動解析手法を用いて,化学反応器内の流動解析を行う.これまでに水熱合成反応に伴って反応器内部で微粒子による閉塞や管路の腐食等が報告されているものの,その原因は明らかにされていない.そこで反応器内部の粒子の生成位置や流動との関連を明らかにする.特に同じ反応器形状であっても流動条件によって粒子径は異なることが知られており,超臨界流体の流動と粒子生成の関係を明らかにする.また,計算によって得られた粒子径分布を実験結果と比較することで,提案した粒子生成モデルの妥当性を評価する. これまでにいくつかのグループによって様々な反応器形状が提案されているものの,それらは経験的に形状や流量等の条件を設定していた.そこで,これまでに提案されているいくつかの反応器形状で,粒子生成モデルを用いた超臨界流体の三次元流動解析を行い,それぞれの反応器における流動と粒子生成の関係を明らかにし,新たな反応器設計への知見および新規の反応器の提案を行う.
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