2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24860013
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
伊藤 紘晃 山形大学, 農学部, 助教 (80637182)
|
Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
Keywords | 鉄 / 腐植物質 / フェロジン / 酸化還元 / 錯形成・解離 / 反応速度論 |
Research Abstract |
本申請課題においては,光存在下において,自然水中の有機鉄錯体から生じる溶解性無機鉄の濃度を算出するための化学反応モデルを構築することを目的としている。本年度は,光照射実験に先立ち全体の反応の解析に必要な知見を補完するため,自然由来有機物をリガンドとした有機第一鉄錯体(Fe(II)NOM錯体)の解離速度定数の正確な値を得ることを目的とした。 初めに,Fe(II)NOM錯体にFe(II)キレータであるフェロジンを添加することによってFe(II)NOM錯体の解離速度定数のみを未知パラメータとした測定ができるかどうか,検証を行った。しかしながら,Fe(II)を全て錯形成できるような比較的高い濃度のNOMが存在すると,NOMによってFe(II)がすぐさま酸化されてしまうために,Fe(II)NOM錯体の解離のみを観察することは困難であることが示された。そこで,比較的低いNOM濃度を採用し,Fe(II)NOMの解離に加え,Fe(II)NOMの錯形成が動的に生じている条件の下で,フェロジンを添加するタイミングを変化させることで,溶解性Fe(II)濃度の変化を観察した。得られた反応曲線より,Fe(II)NOMの錯形成速度定数と解離速度定数の比(i.e., 条件付き安定度定数)が280,000 L/molと推定された。また,反応曲線に対するモデルフィッティングの結果から,現在のところ,Fe(II)NOMの錯形成速度定数と解離速度定数に関して,それぞれ17,000 L/mol/sと0.06 /sの推定値が得られているが,それぞれ1オーダー程度誤差を含む可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,自然由来有機物をリガンドとした有機第一鉄錯体(Fe(II)NOM錯体)の解離速度定数の正確な値を得ることを目的とした。これまでにFe(II)NOMの錯形成速度定数と解離速度定数の比を推定し,また,Fe(II)NOM錯体の解離速度定数に関しては,おおよその値を推定することはできた。しかしながら,正確な値を得るまでには至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は光によって励起されたNOMによる鉄の酸化・還元反応の解析を行っていく。 また,Fe(II)NOMの解離速度定数の正確な値を得るため,本年度の課題に関する追加実験を行う。Fe(II)NOMは酸化によりFe(III)NOMとなるが,Fe(III)NOMの還元によるFe(II)NOMの再形成と,そのFe(II)NOMからのFe(II)への解離,Fe(II)からのFe(II)NOMの錯形成は,わずかながら生じている。今後は,少しずつ生じるFe(II)をフェロジンがトラップしていく様子を観察し,Fe(II)NOMの錯形成とフェロジンによるFe(II)のトラップとの競合の様子を調べることによって,Fe(II)NOMの錯形成速度定数と解離速度定数のそれぞれの値の推定を試みる。
|