2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦後台湾の都市住宅における「日本」─戦前の設え・建築技術の継承と生活習慣への影響
Project/Area Number |
24860022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白 佐立 東京大学, 教養学部, 特任助教 (70636571)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 台湾 / 揚げ床居室 / 和室 / 日本統治期 / 鉄筋コンクリート補強煉瓦造 / 生活習慣 / 建築技術 |
Research Abstract |
本研究は戦後台湾の都市住宅における日本統治期の建築技術の継承に焦点をあて、その台湾人の生活習慣への影響関係を考察するものである。本年度は文献調査を中心に以下の二つのテーマについて研究を実施した。 第一に、「住宅空間に織り込まれた日本の生活習慣」を考察するために、日本統治を継承する最も象徴的な装置である、都市住宅に設けられた揚げ床居室を着目した。具体的な研究内容は1974年に創刊されたインテリアデザイン系雑誌『摩登家庭』(注:モダンファミリーの意)に掲載された、揚げ床居室のある事例を精査し、その称呼とデザイン意匠の変遷について考察した。また、その変遷を示す社会的意義を分析した。これらの研究成果は2013年6月開催の台湾建築史論壇にて、「戦後台湾新建住宅中「和室」的形成理由与風格変化」と題する報告を行う予定である(事前審査通過済)。 第二に、「戦前の建築技術の継承」に関しては、戦前に煉瓦造の耐震構法として成立し、今もなお使われている「鉄筋コンクリート補強煉瓦造(以下補強煉瓦造と略す)」を中心に分析を行った。具体的な研究内容は戦前に台湾建築会により出版された『台湾建築会誌』(1929年~1945年)を精読し、補強煉瓦造に関する論述と事例をリストアップし、補強煉瓦造の成立背景・過程、及び戦後の同構造の展開を考察した。その研究成果の一部は2013年度日本建築学会大会にて「戦後台湾の建築技術規則にみる鉄筋コンクリート補強煉瓦造」を発表する予定である(大会用論文投稿済み)。 概して平成24年度は文献分析を中心に研究を実施した。そのためとりあげた事例にやや偏りがあり、都市住民の暮らしぶりを充分には解明できていないと考えられる。こうした状況を補足できるよう、平成25年度は文献調査とフィール調査を組み合わせて検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・『台湾建築会誌』、『摩登家庭』、各年代の住宅地図など、本研究に必要な文献資料の収集を予定通り完了した。 ・収集した文献資料を精読し、本研究のテーマの具体的な事例として、「揚げ床居室」と「鉄筋コンクリート補強煉瓦造」という2つのキーワードを抽出することができた。 ・現段階の研究成果を学会にて発表することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
・文献分析による建築類型の比較:雑誌や書籍に掲載される住宅平面図から、戦後に建設された都市住宅の建築類型と戦前の日本家屋の特徴を比較することでその類似/相違点を明らかにする。そして、そこから生活習慣の変化を読み解く。 ・フィールドワークによる生活習慣の採集:台北市で戦後から1970年代までに建設された住宅から特徴的な事例を選択し、実測調査(平面図、断面図等の作製)および生活習慣に関する聞き取り調査を実施する。 ・本研究の対象となる住宅のうち現存する多くは、現在都市再開発の対象となっており、今後10年程度で大規模に取り壊されることが予想される。そのため丁寧に映像と写真で調査対象となる住宅を記録することで、本研究成果を将来ドキュメントとしても活用できると考えられる。
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