2012 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物メソクリスタル膜の作製とその透明導電膜への応用
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24860031
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
我田 元 信州大学, 工学部, 助教 (40633722)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化亜鉛 / 透明導電膜 / 溶液法 / スピンスプレー / メソクリスタル / イオン液体 |
Research Abstract |
平成24年度はこれまでの実績をもとに,酸化亜鉛(ZnO)メソクリスタル膜の作製に注力した。とくに,メソクリスタル形成に重要となる有機添加剤の検討を行った。有機修飾剤としては主にイオン液体(1-alkyl-3-imidazolium塩や塩化コリン-尿素系の低共融点溶媒)の効果を調査した。Imidazolium塩のイオン液体では六角板状のZnO結晶が得られ,水酸化ナトリウムの添加量やアルキル鎖長をコントロールすることで板が連なった構造を取るとわかった。低共融点溶媒では柱状のZnO結晶が得られると分かった。特に反応温度などを変化させることで,ZnO結晶サイズ増加を確認したが,メソクリスタル形成は確認されなかった。これは低共融点溶媒はZnOに対して高い溶解度をもつためと考えられる。また,スピンスプレー装置を立ち上げ,ZnO成膜を行った。スピンスプレー法とは,加熱した基板に“金属塩を含む水溶液”と“pH 調整用の水溶液”を同時に噴霧し,酸化物膜を作製する手法である。基板は加熱されたまま回転しているため,噴霧された2 つの溶液は基板上で液膜を形成し,この液膜中で酸化物結晶の核生成と成長が進行する。この場合,基板加熱により基板上での不均一核生成と液膜中での均一核生成が同時に進行するものの,回転による遠心力によって,基板に密着していない粒子は流される。溶液は常にスプレーされるため,基板近傍での核生成と結晶成長は促進され,シード層が無くとも低温で密着性の良い酸化物膜を再現性良く得られる。これまでの研究成果から,硝酸亜鉛水溶液およびクエン酸ナトリウムを添加したアンモニア水溶液を使用し,同様の透明導電性ZnO膜を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究により,有機添加剤,特に種々のイオン液体とそのZnO結晶形状に及ぼす影響を調査できた。とくに,imidazolium塩と低共融点溶媒では全く異なる影響をもつことが分かった。これは有機官能機の影響だけでは無く,ZnOの溶解度も関連していると考えられた。また,スピンスプレー装置を立ち上げ,ZnO透明導電膜を得ることに成功している。得られた比抵抗値は,これまでと同程度程度である。上記のように当初計画としてはほぼ順調に進行している。しかし,特性の劇的改善には至っていない点や,特性発現の基礎原理に不確かな点が多い点など解決すべき課題は多い。また,有機物添加量が比抵抗値に及ぼす影響は不明であり,構造変化に及ぼす影響やキャリア濃度増加の効果と併せて調査していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,平成24年度で得られた成果を深耕するとともに,ZnO以外の光触媒材料についても同様の効果があるのか調査する予定である。イオン液体についてはスピンスプレーに適用するとともに,添加量が構造や特性に与える影響について調査を進める。また,水溶性高分子類についても官能基や炭素鎖長の結晶形状への影響について調査を進める。これによって導電性付与の基本原理の解明と特性の更なる向上をはかる。 ZnO以外の光触媒材料として,TiO2とSnO2を検討する予定である。これらは過去にスピンスプレー法による成膜の報告が無い。そこで,はじめにZnO 成膜の知見をもとに溶質とpH 調整水溶液を検討する。TiO2 に関しては,Ti 源として水溶性のヘキサフルオロチタン酸アンモニウムまたはチタンペルオキソクエン酸錯体,pH 調整水溶液としてホウ酸,アンモニアまたは水酸化ナトリウム水溶液を使用する。SnO2 に関しては,Sn 源として塩化スズ(IV)もしくはフッ化スズ(IV),pH 調整水溶液としては同様にホウ酸やアンモニア,水酸化ナトリウムを用いる。また,前駆体水溶液に有機系添加剤を導入し,メソクリスタル構造の形成を狙う。使用する有機系添加剤については,ZnO メソクリスタル膜形成にて有効であった水溶性高分子やイオン液体の中から検討する。また,それぞれの膜のキャラクタリゼーションおよび物理特性も評価する。
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Research Products
(6 results)