2012 Fiscal Year Annual Research Report
エマルション内架橋プロセスを導入したラズベリー型ナノゲル集合体の構築
Project/Area Number |
24860036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田原 義朗 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (30638383)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ナノゲル / 多糖 / エマルション / ドラッグデリバリー / タンパク質医薬 |
Research Abstract |
本研究では、Water-in-Oil(W/O)型エマルションの水中で、ラズベリー型ナノゲル集合体の調製を行った。具体的にはコレステロール化プルランにアクリロイル基を導入した反応性疎水化多糖ナノゲルを合成した。また顕微鏡観察のために蛍光基であるローダミンも導入した。これに光ラジカル開始剤であるirgacure2959を加え、365nmの紫外光照射によってナノゲルの架橋反応を行った。これによって光重合によってナノゲル架橋ゲルが調製できることを確認した。次にW/O型エマルションの水中でこの反応を行うことでラズベリー型ナノゲル集合体の調製に成功した。W/O型エマルションの水中でナノゲルの架橋反応を行うことは前例のない試みであったため多くの試行錯誤を要した。本研究における最大の課題は、調製時の界面活性剤の選定であったが、これは現在のところリン脂質を用いることで解決した。当初は合成界面活性剤を利用していたが、合成界面活性剤はエマルションの調製には適しているが、その後の界面活性剤の除去の行程において不適当であることが分かり、リン脂質を用いることとした。また当初は他のナノゲルの架橋反応と同様に架橋剤を利用することを試みていた。確かに架橋剤を用いることでナノゲル架橋ゲルの強度の向上や低濃度化は実現できるが、架橋剤の界面活性効果によってエマルションが球形にならないということが問題となった。そこで架橋剤を用いずに調製すると、エマルションが球形となり、得られたラズベリー型ナノゲル集合体も球に近い構造を得ることに成功した。この点が本年度の研究において独自に見いだされたことであり、架橋剤を用いないナノゲル架橋ゲルの調製という点においても、他の研究と差別化できる点である。以上のように本年度は有益な知見を得ることができ、これらを元に次年度の研究が進展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
W/O型エマルションの水中でナノゲルの架橋反応を行うことは前例のない試みであったため多くの試行錯誤を要したが、現時点での課題も鮮明になり、次年度で当初の目的が達成される道筋が見えたことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。本研究における最大の課題は、調製時の界面活性剤の選定であったが、これは現在のところリン脂質を用いることで解決した。当初は合成界面活性剤を利用していたが、合成界面活性剤はエマルションの調製には適しているが、その後の界面活性剤の除去の行程において不適当であることが分かり、リン脂質を用いることとした。また当初は他のナノゲルの架橋反応と同様に架橋剤を利用することを試みていた。確かに架橋剤を用いることでナノゲル架橋ゲルの強度の向上や低濃度化は実現できるが、架橋剤の界面活性効果によってエマルションが球形にならないということが問題となった。そこで架橋剤を用いずに調製すると、エマルションが球形となり、得られたラズベリー型ナノゲル集合体も球に近い構造を得ることに成功した。この点が本年度の研究において独自に見いだされたことであり、架橋剤を用いないナノゲル架橋ゲルの調製という点においても、他の研究と差別化できる点である。また光重合反応に用いる光の最適波長の検討も行った。今回用いたirgacure2959というラジカル開始剤において、他の研究者らが以前に報告していた波長は365nmであり、当初はこの波長によって実験を行っていた。ところがもう一つの水銀ランプの輝線にあたる313nmでは、さらに効率の良い光重合反応が起こることが分かった。以上のように本年度は有益な知見を得ることができ、これらを元に次年度の研究が進展することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では集合体の調製方法の確立を目的とし、実際の前臨床実験に用いる段階にまで調製技術を向上させる計画である。現段階の調製方法の課題として以下のものが挙げられる。①真球状態の集合体の調製、②安定した再現性、③ラジカル型開始剤による蛍光基の不活化、④サイズの異なる集合体の調製。現段階で得られているラズベリー型ナノゲル集合体は、球状態の集合体は得られたが、未だに真球状態の集合体が得られていない。また再現性も安定していないことも問題であり、これらは直ちに解決すべき課題である。①と②については光架橋反応条件の最適化によって解決されると考えられる。今年度の研究によって、本研究において光架橋に用いる照射光の最適波長は、他の研究者らが以前に報告していた波長とは異なることが判明した。したがって照射光を最適な波長に合わせることで、効率の良い光架橋反応が達成され、①と②の真球状態かつ安定した再現性のある調製法の確立ができると考えられる。また本年度の研究で光架橋反応後にナノゲルに修飾していた蛍光基の退色が見られ、③も前臨床実験の前には解決すべき課題である。③の解決のために、ラジカル開始剤も1種類ではなく複数検討することを考えている。また本研究ではサイズの制御されたラズベリー型ナノゲル集合体の開発を目指していることから、少なくとも2種類のサイズのラズベリー型ナノゲル集合体が安定に調製できる方法が望まれる。本年度の検討によって、④は界面活性剤濃度や、エマルションの水相と油相の体積比などの変更によって調整することは難しいことが分かったため、エマルションの調製方法を機械的に変更することによって、④を解決する計画である。
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Research Products
(4 results)