2012 Fiscal Year Annual Research Report
固体NMR測定によるシルクフィブロイン表面構造の評価
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24860043
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
橋本 朋子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (10589930)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | フィブロイン / 固体NMR測定 / 生体材料 |
Research Abstract |
シルクフィブロインを生体材料として用いた際に見られる細胞との特異的な相互作用は、従来の表面特性である表面電位や接触角だけではなく、フィブロイン分子の構造が大きく影響していると考え、本研究課題ではフィブロイン分子の詳細な構造解析を行うことを目的としている。 平成24年度はシルクII型含有率がより高いフィブロイン成形体サンプルとして主に市販のシルク布地を用いて評価を進めた。固体NMR測定の手法としては、結晶領域の運動性の低い分子を強調するCP/MAS測定法、ならびに非晶領域の運動性の高い分子を強調するPST/MAS測定法を用いた。純水に浸漬させた湿潤状態で所定時間加熱処理を行ったサンプルの固体NMR測定結果より、処理時間の増加に伴い可逆的に構造が変化することが明らかとなった。また、固体CP/MAS NMR測定、固体PST/MAS NMR測定でそれぞれ得られたスペクトル強度比を比較することにより、シルクI型、II型というフィブロイン分子の各構造は条件により異なった運動性を示し、このフィブロイン分子の運動性が可逆的な構造変化に影響していることが示唆された。これまでの検討より、湿潤加熱により構造が変化するのは、水と接する表面近傍のフィブロイン分子のみであることが示唆されていることから、異なった運動性を示す各構造は、フィブロイン成形体の表面に存在していると考察しており、フィブロイン分子の構造と運動性に関する新たな知見が得られた。 表面積の多いフィブロイン成形体として、既報に従いフィブロイン100%のスポンジを作成した。また、フィブロイン成形体内におけるシルクII型の局在可視化を達成するため蛍光試薬を用いた予備実験を行った。 これら分子の構造・運動性の評価、ならびに各構造の視覚的な評価をさらに進めることで、フィブロインの特徴的な表面特性解明が達成できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた銅などの常磁体を含有させたサンプルを用いての固体NMR測定は放電により測定が困難であったため、方針を転換し、CP/MAS法、並びにPST/MAS法による固体NMR測定を主にして構造解析を進めた。フィブロイン成形体としてシルクII型の含有率が元来高い布地を用いての詳細な構造解析より、構造に関する結果に加え、フィブロイン分子自体の運動性という非常に有用な知見を得、フィブロイン分子の構造変化が可逆的に起こっている可能性を見出すことができた。マルチモードAFMによる表面観察はフィブロインフィルムを用いての評価を進めたが、明瞭な結果を示せるまでには至っていない。シルクII型の局在可視化を目指し、蛍光剤の使用を考案し予備実験を行った。フィブロイン分子の構造による局在の視覚的な評価はこれまでに報告がなく、有用な知見を得る可能性を見出した。 以上より、課題全体としておおむね順調に進んだと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた銅などの常磁体を含有させたサンプルを用いての固体NMR測定は放電により測定が困難であるため、平成24年度と同様、方針を転換し研究を進める。平成24年度に行った結晶領域、または非晶領域をそれぞれ強調するCP/MAS法、並びにPST/MAS法にて固体NMR測定を引き続き行い、表面構造の解明を目指す。昨年度の固体NMR測定では、フィブロイン成形体として主に糸(布)を選択し使用した。本年度は糸に加え、昨年度作成したスポンジやフィルムなど、表面積の異なる成形体を使用し、水の影響を受けやすい表面近傍の分子の二次構造・運動性について評価・比較を行う。そして、含水の状態や、成形体の形状、またNMR測定法を変え、表面近傍の分子構造・運動性の差異を比較し、表面構造解明につなげる。 NMR測定と並行し進める新たな試みとして、アミロイドのベータシート構造を認識する蛍光剤として知られているチオフラビンTを用いた蛍光観察を行い、フィブロインのシルクII型(ベータシート構造)の局在可視化を目指す。チオフラビンTによりフィブロイン成形体を染色し、シルクII型のみの表面局在を蛍光顕微鏡、または共焦点レーザー走査型顕微鏡により観察する。また、チオフラビンTと同領域の励起・蛍光波長を有し、かつシルクII型に特異性のない硫酸ベルベリン等の蛍光剤をコントロールとして使用する。 また、フィブロイン表面の微小領域の形状観察を原子間力顕微鏡(AFM)により行う。AFMで観測するフィブロイン成形体は、マイカ上に作成したキャストフィルムなどを用いる。 以上の手法を組み合わせ、表面電位や接触角といったこれまでの表面特性とは異なる、フィブロイン成形体の表面特性解明を目指す。
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Research Products
(2 results)