2012 Fiscal Year Annual Research Report
大容量・極低消費電力ネットワークに向けた高速・高安定・高精度波長変換器の研究
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24860046
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 和利 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (10563827)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 特許出願(3件) / 波長検出の実現 / 波長変化のシステム同定 |
Research Abstract |
高速波長検出機構を実現するため以下に述べる要素技術を立ち上げた。 (1)波長差電気信号生成:100GHz級高速フォトダイオードおよび被測定光と波長基準光を合波しフォトダイオードへ導入する機構を持つ光学系を構築した。この光学系を用いて基準光に対する波長の違い、具体的には波長0.1nm(光周波数に換算して12.5GHz)の差をフォトダイオードの二乗検波特性を利用して電気の周波数に変換した。 (2)波長可変レーザの波長変化動作に対するシステム同定:波長差検出で得られた波長情報をもとに波長安定化を行うために、まず波長可変レーザの波長切替時における過渡的な波長変化のメカニズムをシステム同定した。システム同定には実験結果をシミュレータ(MATLAB)上で解析した。さらに同定されたシステムの逆システムを求め、これをフィードフォワードコントローラとした。シミュレータ上でこのフィードフォワードコントローラを用いて波長切替シミュレーションを行った結果、波長切替後100ns以内で高速に波長安定化することが確認された。 上記成果はナノ秒領域で動作する光スイッチングを実現するための高速・高安定・高精度波長変換動作検証のための評価系を実現できたこと、また目標とするハードウエアの実現可能性をシミュレーション上で明らかにできたという意味で次年度への展開につながる重要な成果である。上記技術に関する特許3件をNTTと共同で出願した(うち1件は4月出願手続完了予定)。H25年度はコントローラを実際に作製し、波長可変レーザの高速波長切替、および波長変換機への展開を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度に計画していた(1)波長差電気信号生成においては、高速フォトダイオードを用いて二つの光の波長差を高速フォトダイオードで二乗検波し電気スペアナ上で差周波スペクトルを観察し、適切な評価系が計画通り構築できたことを確認した。 (2)波長可変レーザの波長変化動作に対するシステム同定では、実験データを用いたシミュレーションにより100ns以内で高速に波長安定化することが確認され、本手法の効果が確認されたため、計画はおおむね順調に進捗していると判断した。また上記の検討から、波長制御方法、波長計測方法に関する特許を計画通り3件出願(うち1件は4月出願手続完了予定)しており、研究成果も計画どおりに創出している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)高速電流制御回路波長可変レーザの波長はその電流値によって変化させることから、瞬時に数百ミリアンペアという比較的大きな電流を高精度に制御する回路が必要である。そこで大電流制御回路と小電流制御回路の二系統を並列に接続し、大電流時において高精度な電流制御を可能とする新しい回路を発明、実現する。回路の設計にあたっては、従来の電気回路のシミュレーションではなく半導体レーザと電子部品が混在した光電気シミュレーションが必要になる。シミュレーションでの理論特性確認後、回路を試作し、実際の波長可変レーザにおいて20ナノ秒以下で0.1ミリアンペア以下の精度での電流制御を実現する。(2) PID制御アルゴリズム半導体レーザの波長変化はレーザ共振器内の屈折率変化によって生じる。屈折率変化のメカニズムとして知られているものには、①注入電流によるキャリアプラズマ効果、②印加電圧による電界効果、③注入電流による発熱で生じる熱光学効果、の三つがある。これらの効果をあらかじめ実験的に測定しその時定数から対象とする半導体レーザに最適なPID(P:比例動作、I:積分動作、D:微分動作)係数を設定してフィードバック制御を行う。しかし一つのフィードバックループで上記3つの効果を合わせた従来のPID係数では瞬時に高精度で電流値を安定化させることは不可能であった。そこで本研究では上記3つの効果について物性理論をもとにした定式化を行い、それをもとにそれぞれの効果の時定数を算出して、それぞれに最適なPID係数を導き出す。さらにこれら時定数の異なる3つの効果に対応したPID制御を組み合わせたマルチループPID制御アルゴリズムを考案する。これを上記(1)で述べた高速電流制御回路の駆動アルゴリズムとして実装し、実際の波長可変レーザを制御して、20ナノ秒以下での波長安定化を実現する。
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