2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規バイオポリマー吸着剤による膜閉塞抑制手法の開発
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24860056
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山村 寛 中央大学, 理工学部, 助教 (40515334)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 膜分離 / 用排水処理 / 膜閉塞 / バイオポリマー / 多糖類 / 吸着剤 |
Research Abstract |
膜閉塞の抑制は、膜閉塞成分の素性を明らかにした上で、その成分にターゲットを絞った適切な前処理を実施することで達成できる。我々はこれまでに自然水中の親水性高分子成分(以後バイオポリマーと表記)が膜閉塞物質の主成分であることを明らかにしており、このバイオポリマーが効率的に除去できれば、汚染された原水(下水)でも水質を改善でき、膜処理技術の適用範囲の大幅な拡大が望める。本申請課題では、自然水に含まれる有機物からバイオポリマーを選択的に吸着する樹脂を開発し、膜閉塞の主成分であるバイオポリマーを膜の前段で吸着除去する新規膜前処理プロセスを提案する。具体的には、(1)バイオポリマーと親和性の高い官能基の探索、(2)官能基へバイオポリマー選択性の付与、(3)吸着剤の作成、(4)運転ソフトの開発、及び(5)プロセスの検証を目的として研究を実施した。 平成24年度にはアルギン酸をバイオポリマー代替有機物として官能基の探索試験を行い、アルギン酸中に含まれるカルボキシル基と窒素を含む官能基間に静電気的な強い相互作用が存在することを見いだした。一方で、本研究により見いだした官能基はフミン酸とも強い相互作用を有すること回分吸着実験によって明かになった。この官能基にバイオポリマーへの選択性的吸着性能を保持させるために、バイオポリマーと親和性が高く、フミン酸との親和性が低い高分子材料によってアミン基を抱埋したものを作成し、吸着性能を評価した結果、有機物濃度3mg/L以下の領域において、バイオポリマーの選択的吸着性能を示した。茨城県W川より採取した湖沼水を用いて新規吸着剤による回分吸着実験・膜ろ過実験を行った結果、前処理により50%程度のバイオポリマーが減少し、不可逆的膜閉塞が40%程度抑制出来ることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24能を持つ樹脂を開発することに成功した。当初の予定では、官能基単独でバイオポリマーとの高親和性、高選択性を持たせるつもりだったが、官能基単独では選択性に乏しいことが問題となり、ポリマーアロイ技術を応用した官能基のポリマーキャップにより選択性を付与する方法に至った。本研究で用いた手法は他に報告例がなく、官能基を変えることで様々な吸着剤に選択性を持たせることが出来ることから、これまでの吸着プロセスに革新をもたらす可能性がある。以上の結果から、「想定を超えた成果が得られた」との自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、バイオポリマー選択吸着剤を大量に作成し、埼玉県内の浄水場に設置したパイロット膜ろ過装置を用いて、長期安定性試験、繰り返し樹脂回復試験を実施する。年間を通して運転することで、水質の変化や樹脂の劣化など、実際の膜ろ過運転で使用する際の問題点を抽出すると共に、さらなる樹脂能力向上(低コスト化)に向けて、吸着性能や選択性を改良する。また、活性炭に変わるジオスミン、2-MIB吸着剤の開発を目的として、ポリマーキャップ型新規イオン吸着剤の開発に向けた基礎的検討を開始する。
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Research Products
(2 results)