2012 Fiscal Year Annual Research Report
誘導加熱励起式赤外線位相解析検査法によるCFRPの非破壊検査
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24860058
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石川 真志 東京理科大学, 基礎工学部, 助教 (10635254)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 非破壊検査 / サーモグラフィ / 複合材料 / 誘導加熱 |
Research Abstract |
本年度はまず有限要素解析を利用した誘導加熱による内部発熱のシミュレーションを実施した。本解析には汎用有限要素解析ソフトANSYS ver.14.0を利用した。これにより、交流周波数、および検査対象物-誘導コイル間距離の変化に伴い発熱の大きさが変化することを確認した。しかし、発熱量はコイル形状にも依存することが考えられ、この点に関しては本年度中に十分な検討ができていない。 また、上記有限要素解析の実施と平行して、実際の誘導加熱サーモグラフィーによる実験を行うため、実験装置のセットアップを行った。実験に必要な物品のうち、赤外線カメラおよび交流電源については昨年度来本研究に関して協力関係にある(独)宇宙航空研究開発機構より借用し、その他の物品(誘導コイル、検査用可動ステージ、結果画像解析用PC)について本申請研究予算にて準備を行った。さらに欠陥形状の異なる2種類のCFRP試験片、および比較の為の金属試験片を作成し、それぞれについて実験を実施した。 実験は有限要素解析においても検討を行った周波数10kHzの交流電流を利用して行い、得られた温度画像はフーリエ変換を行うことにより位相画像に変換し、2つの画像の比較も行った。実験の結果、温度画像と位相画像との大きな違いとして、温度画像では加熱を行った誘導コイルの形状が画像上に不均一な温度分布として明瞭に現れるのに対し、位相画像では画像周波数の選択によりコイル形状の影響を消すことができ、欠陥部の識別が容易となることが確認された。温度画像におけるコイル形状に伴う不均一加熱は、誘導加熱方式では欠陥検出の為の大きな障害であるが、位相画像に変換することでこれを除去できるという点において本検査方法は従来方法よりも効果的であると期待できる。この位相画像の利点により、いずれの試験片についても位相画像において温度画像中よりも深い欠陥の検出が可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に実施予定としていた有限要素解析による検討事項は、入力する交流電流周波数および検査対象物-誘導コイル間距離による影響に加え、コイル形状の影響についても予定していた。しかしながら、本解析で実施した磁場-電熱連成解析についてこれまで不勉強であったこともあり、解析技術の習得および解析モデルの検討・作成に時間を要し、コイル形状の影響に関する十分な検討は実施できなかった。また、解析的に得られた温度データを変換し、各パラメータ変化による位相データへ影響についても実施すべきであるが、この点も不十分である。 実験装置の試作および実験用試験片の準備に関してはおおむね計画通りであり、実験の実施および温度画像と位相画像との結果比較も行い、従来方法と比較して位相画像を利用することの優位性の確認を行った。しかし、本実験は有限要素解析結果に対する検証実験の意味を持っており、解析の遅れに伴い当初の実験目的の達成も遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、まず遅れている解析的な検討を早急に実施するとともに、解析結果の実験的な検証を行う。また、コイル形状も考慮した検査条件の最適化を解析的に目指すとともに、最適化された欠陥検出能力の評価を実験的に行うことを目標とする。また、2年目の実施予定事項として、加熱時間と結果画像(温度および位相画像)との関係評価を含めていたが、この点も解析的に検討可能であると考えられ、上記事項と合わせて検討を進める。 さらに、2年目の実施事項の一つとして予定していた異方性の影響についての検討であるが、本年度は異なる炭素繊維で強化された熱的な物性値の異なる新たな試験片を作製予定である。熱物性の違いにより欠陥検出能力に差異が見られると考えられ、これを実験的に確認するとともに、上記と同様に解析的手法による定量的な評価も実施する。 上記の各検討結果より、本検査方法における最適な検査条件を考慮することでどの程度の欠陥検出能力が得られるか確認するとともに、各パラメータの変化に伴う温度画像および位相画像への影響を定量的に評価し、本手法がCFRPに対する検査手法として有効であることを示す。 本研究の実施にあたり、昨年度来協力関係にあった(独)宇宙航空研究開発機構および株式会社KJTD(旧日本クラウトクレーマー株式会社)との協力関係は本年度も継続される予定である。これにより、本年度も各専門家と随時意見交換を行いながら研究を進めることができる。 得られた成果は国内および国外の学会において発表を行う他、学術論文としての発表も見据えて検討を進める予定である。
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Research Products
(1 results)