2012 Fiscal Year Annual Research Report
クメール宗教建築の伽藍構成と造営手法に関する基礎的研究
Project/Area Number |
24860061
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小島 陽子 日本大学, 理工学部, 研究員 (30548095)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 東南アジア / クメール / カンボジア / 伽藍構成 / 造営手法 |
Research Abstract |
本研究は、クメール宗教建築の特徴的な「ピラミッド式」伽藍において、積層した基壇の上に建物を配置する手法の変化を検証し、クメール宗教建築における伽藍形成の独自性を考察することを目的としている。大規模な「ピラミッド式」伽藍は造営に10年以上の歳月を要したとされる。これより、段台基壇の各層に建物を配する作業は、各層の配置計画だけでなく、段台基壇の構築手順など、段階的な作業工程と関係すると考え、想定した施工の手順から伽藍における配置計画の検証を行っている。 本年度は、10世紀の伽藍に焦点をあて、1回の現地調査を行い、1編の論文の投稿を行った。 調査では、2つの伽藍において、①各建物や基壇などの位置関係や建物の寸法構成の検証を行うために、伽藍の測量と建物の実測を行い、②伽藍の各所の施工手順や造営時の基準線や基準点を想定するために、伽藍に残された刻線などの形状や刻まれている位置の記録、各部位の施工の前後関係が分かるような詳細な石積みの記録を行った。 論文では、10世紀中葉に造営された2つの「ピラミッド式」伽藍において、伽藍の高層化にともない下層の段台基壇と建物との関係は変化するが、主祠堂がのる段台基壇とその上の副祠堂は、どちらも主祠堂の内法寸法の整数倍で規定され、造営された可能性が高いことを明らかとした。同一工匠集団による造営と推察され、10世紀末に造営が開始されたその後の「ピラミッド式」伽藍では、伽藍の平面規模は同じであるが、さらに高層化した段台基壇上の祠堂は、砂岩を主材として前室を設け、回廊で塔門をつなぐなど、それ以前と異なる建築構成がみられることから、造営手法が変化する事が想定される。今後も伽藍構成と造営手法の変化について継続して研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、交付内定時期により研究期間が半年と短く、現地調査は1回に留まった。 調査では、2つの伽藍で測量と建物の実測、伽藍に残された刻線などの形状や刻まれている位置の記録、各部位の施工の前後関係が分かるような詳細な石積みの記録を行った。 本年度の目的の達成には、さらに2つの伽藍についての調査が必要である。このため、調査結果をもとにした論文の投稿も1編に留まり、当初の計画よりやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の現地調査でえたデータの検証を進めるとともに、今年度に調査を行えなかった10世紀以前の2つの伽藍について、夏期調査で測量と建物の実測、施工に関わる痕跡の記録を行う。これらのデータの検証結果を併せて、10世紀以前の伽藍構成に関する論文の投稿を行う。 冬期調査では、11世紀以降の伽藍の調査研究を進め、それまでの成果を併せて、クメール宗教建築の伽藍構成と造営手法について考察を行う予定である。
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