2012 Fiscal Year Annual Research Report
歌合・通過儀礼を通してみた寝殿造の復原的研究-皇后・内親王の行事を中心に-
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24860064
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
赤澤 真理 同志社女子大学, 生活科学部, 助教 (60509032)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 寝殿造 / 歌合 / 通過儀礼 / 栄花物語 / 打出 / 装束 / しつらい / 藤原頼通 |
Research Abstract |
本研究は、平安時代の皇后・内親王などの女性を主催者とする歌合や通過儀礼に着目し、調度や装束によるしつらいを含めた催しの空間を、復原的に明らかにすることを目的とする。 本年度は、皇后・内親王を主催者とする宴・通過儀礼の復原的検討を推進するために、『平安時代歌合大成』『皇室制度史料』等から、皇后・内親王が参加した行事の際のしつらいを抽出した。結果、歌合・通過儀礼等において、その空間を装飾した女房装束の打出の記述が散見された。打出は、晴儀の際に、寝殿の廂に女房が並んでいるように、女房装束を重ねたままに置き、その袖褄を隔ての御簾や几帳の下から簀子にかけて打出したものである。打出の具体的な実態について、建築空間の視点から明らかにした研究は少ない。そこで本年度は、『枕草子』『源氏物語』『栄花物語』『狭衣物語』等の平安文学に着目し、打出の成立と展開を検討した。 『枕草子』『源氏物語』等の11世紀までの文学を検討した結果、晴儀の際の打出のしつらいは確立しておらず、御簾内の女房の衣が自然にこぼれているのが良いとされた。11世紀中頃になると、藤原頼通周辺の女性を主催者とする行事を中心に、晴儀のしつらいとして打出が定着する。特に『栄花物語』には、祭・大饗・臨時客・法華八講・立后・算賀・歌合・行幸などの行事の際に、打出がなされたことが記される。寝殿の西あるいは東から渡殿、対の東あるいは西面、南面へと出され、公卿はその様子を渡殿・簀子・廂等から鑑賞した。いっぽう、使者の歓待などの際に妻戸に置かれるなど、その作法には多様性がみられた。さらに、打出の記述が多数散見される『中右記』には、打出を「美麗過差」とし、服喪中等には忌避する記述が確認できる。今後は、古記録を対象に、院政期までの展開を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来十分に検討されてこなかった、平安時代の皇后・内親王などを主催者とする行事の空間について、女房装束の打出を視点とすることで、行事の空間の具体像や特質を検討することが可能となった。具体的には、行事別の打出の作法の展開、年代による打出の変遷、女房と男性公卿のしつらいに対する意識の相違など、今後の課題が明確になってきた。以上を明らかにすることで、従来明らかにされてこなかった『源氏物語』以後の平安女流文学の舞台としての寝殿造の使い方の一端が明らかになるものと予見される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、『源氏物語』の次世代『栄花物語』成立時期を検討する予定であったが、院政期の古記録を検討すると、打出についての豊富な記述が散見され、年代によるしつらいに関する作法や意識の変化があったことが確認できた。そこで、院政期までの変遷を明らかにする必要性が生じた。今後は、年代を院政期まで広げ、検討を推進する。合わせて、しつらいを視覚的に検討するために、院政期以降に制作された絵巻等の絵画史料を対象にする。
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Research Products
(2 results)