2012 Fiscal Year Annual Research Report
音波共鳴管実験に基づく蒸発係数決定のための実験式の確立
Project/Area Number |
24860069
|
Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 篤人 奈良工業高等専門学校, 電子制御工学科, 助教 (80619867)
|
Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
Keywords | 蒸発係数 / 凝縮係数 / 相変化 / 共鳴音波 / 分子気体力学 |
Research Abstract |
本研究では,音波の共鳴現象を利用した蒸発係数測定法に基づき,様々な物質の蒸発係数を高精度に予測することができる実験式の構築に取り組んでいる.蒸発,凝縮現象は私達の生活のごくごく身近な所で見られる物理現象の一つであり,また工学的にも様々な分野において応用されている.しかしながら,本研究で取り扱う蒸発係数などのように,未解明の事柄がいくつか残されている.蒸発係数は分子気体力学における支配方程式,Boltzmann方程式を用いて蒸発,凝縮問題を取り扱う際に必要となる境界条件,気体論境界条件に含まれる未知数の一つである.そのため,蒸発係数がわからなければ,分子気体力学を用いて蒸発,凝縮現象を取り扱うことはできず,気体と液体の境界面を通して,どれだけの質量,運動量,エネルギーが交換されるか,求めることはできない. 初年度となる平成24年度は,蒸発係数の温度依存性に関する検証に取り組んだ.蒸発係数の温度依存性については,いくつかの文献で指摘されているが,実験により確認された例は見当たらない.また本研究の目的である実験式の構築を達成するためにも蒸発係数の温度依存性検証は重要なプロセスである.本研究では,実験系内の温度変化ならびに実験系が設置される真空容器内圧力を精密に測定するためにデータロガーを導入し,併せて実験系を直接加熱するためにフィルムヒーターを導入した.実験系の温度制御については,従来恒温器内に実験系を設置することで対応していたが,実験系は更に真空容器内に設置されており,実験時は減圧条件(試料の飽和蒸気圧)となることから,所定の温度に到達するのに時間を要していた.これらの導入にもとづき,広範な温度条件における蒸発係数測定,ならびに蒸発係数の温度依存性について検証を実施している.しかしながら,結論を出すためには多くのデータが必要になるため,平成25年度も取り組みを継続する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施初年度となる平成24年度は,広範囲の温度条件において蒸発係数の測定に取り組み,蒸発係数の温度依存性について明らかにすることに取り組んだ.この中では測定中の温度変化,ならびに真空容器内圧力変化を正確に測定することを目的としてデータロガーの導入を行った.また,真空容器内の排気完了から所定の温度に達するまでの時間を短縮化することを目的としてフィルムヒーターの導入を進めた.フィルムヒーターにより実験系を直接加熱することが出来れば,平衡状態に達するまでに必要な時間を短縮化することが可能となり,非凝縮性ガスの混入を防ぐことに繋がる.併せて実験系全体の見直しを進め,真空容器内の排気を行う真空ポンプを高容量のものに変更するとともに,温度測定点数の増大,PVDF受信器検定方法の見直し,液膜厚さが気体中共鳴に及ぼす影響調査などを進めた. 蒸発係数の温度依存性の確認,ならびに蒸発係数測定結果に基づく実験式構築には到達していないものの,平成25年度実施予定であった液膜厚さが測定結果に及ぼす影響の評価,実験系の見直しによる測定精度向上に先行して取り組んでおり,全体として概ね計画通り進んでいるものと考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度実施予定であった,液膜厚さが蒸発係数測定に及ぼす影響調査に関して先行実施したこと,実験系の見直し,改良を平成24年度に一部実施したことを踏まえて,平成25年度は平成24年度に実施を予定していた,広範な温度条件における蒸発係数の測定に引き続き取り組み,蒸発係数の温度依存性に関して検証を行うと共に,得られた蒸発係数の測定結果にもとづき,蒸発係数を高精度に予測することができる実験式の構築に取り組みたいと考えている.なお,取り組みにおいては,前年度に導入したデータロガー,ならびにフィルムヒーターおよび温調ボックスを用いて,蒸発係数の測定精度向上に関する評価も併せて実施したいと考えている. 試料物質として水を用いた場合については,温度300~340K,メタノールを試料物質として用いた場合については,温度260~310Kに設定し,蒸発係数の温度依存性に関して検証を行いたいと考えている.また,平成24年度の取り組みから,液膜厚さが気柱共鳴における圧力振幅に影響を及ぼすことが,再度確認されたことから,測定前に形成する初期液膜厚さを高精度に測定するとともに,測定に費やす時間を正確に測定し,データ毎のばらつきを可能な限り低下させたいと考えている.
|
Research Products
(1 results)