2012 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算を利用したCNT/金属異相界面の破壊メカニズムの解明
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24860076
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
湯浅 元仁 独立行政法人産業技術総合研究所, サステナブルマテリアル研究部門, 研究員 (70635309)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 異相界面 / ナノ複合材料 / 第一原理計算 / 力学特性 / 破壊 |
Research Abstract |
第一原理計算を用いて、カーボンナノチューブ(CNT)/金属異相界面の破壊メカニズムを評価するため、CNT/金属(ニッケル(Ni),銅(Cu), 白金(Pt))異相界面のモデル化を行い、その構造安定性を調べた。その結果、Ni, Cu, PtとCNTの間の安定な界面形成は、その金属とCNT間の格子定数の差(ミスマッチ)により異なる原子構造、安定性を示すことを見出した。 また、CNT/Niナノ複合材料を電解析出法(めっき法)により作製、硬さ試験を用いてその硬さを評価した。予備実験で作製に成功していたCNT/Niナノ複合材料は非常に薄いCNT膜に無電解めっきを用いてNiをコーティングしたものであり、硬さ試験に供することのできるだけの膜厚がなかった。当該年度は、CNTの電気泳動、CNT上のNiの電解めっき条件の最適化を行った。その結果、CNT濃度、電気泳動時の際の電圧、時間を制御することによりCNT膜の膜厚を制御できることがわかった。さらに、Niめっきの際のめっき条件を変化せることを通じて、硬さ試験ができるだけの膜厚を有するCNT/Niナノ複合材料の作製に成功した。実際に硬さ試験により硬さを評価した結果、作製したCNT/Niナノ複合材料は、CNT膜単独よりも25%高い応力を示した。 本研究は、CNT/金属間の異相界面の破壊メカニズムを格子定数のミスマッチから生じる「長距離相互作用」、電子状態の差異から生じる「短距離相互作用」の組み合わせによりモデル化する点が意義深い。また、その妥当性を実験を併用して評価するものであり、これまで乖離のあった計算と実験を繋ぐ重要な試みを含んでいる。当該年度で得られた成果からこれらを繋ぐ準備が整ったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算の面では弊研究所の計算機の能力、実験の面では硬さ試験に供するためのCNT膜厚の制御、Niの電解めっきによるCNT/Niナノ複合材料の作製という壁があり、当初の研究計画を若干修正する必要があった。しかしながら、実験の問題点であったCNT膜厚の制御は完了し、計算の面でも次年度には高性能計算機の導入される予定であり、計算機の能力も解決される見込みである。以上より、研究計画の変更はあったものの研究内容自体はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計算に関しては異相界面構造のモデル化に引き続き、当初の予定通りモデルに引張・せん断変形を加え、CNT/金属異相界面の破壊メカニズムを電子状態の変化から観察する予定である。 実験に関しては当該年度に膜厚を制御することに成功したCNT膜に対し、Ni以外のCu、Ptを電解めっきし、硬さ試験により力学特性を評価する予定である。 最終的に計算結果から得られた異相界面破壊モデルの妥当性を実験から評価し、計算と実験の両面から異相界面の破壊メカニズムを検討し、高い信頼性を有するCNT/金属ナノ複合材料の設計指針を構築する。
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