2012 Fiscal Year Annual Research Report
胎盤性セロトニンが骨格筋脂肪代謝能に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
24870008
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
金野 俊洋 琉球大学, 農学部, 准教授 (60568260)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 脂質代謝 / 胎盤 / セロトニン |
Research Abstract |
本研究は、胎盤のセロトニン生合成能と胎児筋発生に着目し、胎児期の子宮内環境が成体時の脂肪およびグル コース代謝能に与える影響を明らかにすることを目的とするものである。骨格筋はエネルギー源として脂肪を利用する赤色筋線維と糖を利用する白色筋線維により構成され、赤色・白色筋線維の組成は肉質を決定する要因であるだけでなく、骨格筋の代謝特性を決定づける要因でもある。発生過程における赤色筋線維分化には神経支配と前駆細胞でのセロトニン受容体系の確立が重要であるが、胎仔期のセロトニン神経発達には胎盤由来セロトニンが影響することが近年明らかになってきた。そこで、胎仔期の胎盤由来セロトニン暴露が出生後の骨格筋筋線維組成、すなわち骨格筋の代謝特性に及ぼす影響を調べるため、胎盤でのセロトニン合成を阻害するマウスモデルの開発を試みた。平成24年度には、胎盤におけるセロトニン合成の詳細を明らかにすることを目的として妊娠13.5, 14.5, 15.5, 16.5, および17.5日齢の胎盤を採取し、PCR法により胎盤におけるセロトニン合成酵素の発現を検討した。このセロトニン合成酵素はp-クロロフェニルアラニンにより阻害されることが知られている。そこで、胎盤にp-クロロフェニルアラニンを直接投与することによりセロトニン合成を阻害する手法の確立に取り組んだ。p-クロロフェニルアラニン投与区およびコントロールとしてPBS投与区の妊娠マウスより18.5日齢の胎盤を採取し、組織切片をヘマトキシリン・エオシン染色およびサイトケラチン免疫染色し、形態を観察し、胎盤へのp-クロロフェニルアラニン投与が胎盤の組織形態に影響を及ぼさないことを確認した。また、p-クロロフェニルアラニン投与は出生時体重に影響しないことも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の採択は平成24年9月であったが、研究代表者は平成24年12月に所属が東京大学農学部の特任助教から琉球大学農学部の准教授へと変更になった。このため、琉球大学農学部において本研究を継続するための環境整備に多くの時間を費やす必要があり、本研究の達成度は当初予定を満たすことはできなかったが、現在までに本研究の遂行に必要な研究設備や学内での協力体制を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者はこれまでにマウスの胎盤におけるセロトニン合成を阻害するため、妊娠マウスの胎盤へのp-クロロフェニルアラニン投与法の検討を行い、妊娠期間や胎盤の形態的特徴および産子数や出生時体重に異常をきたすことなくp-クロロフェニルアラニンを投与することに成功した。そこで平成25年度はp-クロロフェニルアラニン投与マウスの胎仔脳組織の組織学的検証を行いTPH阻害によるセロトニン神経発達への影響を検討し、出生仔骨格筋の筋線維型構成を酵素組織化学および免疫組織化学的手法により検討することで胎盤TPH阻害が出生時の骨格筋脂質代謝能に及ぼす影響を検討する。また、胎盤TPH阻害が出生仔におよぼす長期的な影響を検討するため、p-クロロフェニルアラニン投与区および対象区マウスより産まれたマウスの骨格筋サンプルを経時的に採取し、その筋線維型構成を検討する。同時に、より簡便な定量的解析法として、western blottingによる骨格筋の脂質代謝能の解析法も検討する。胎盤へのp-クロロフェニルアラニン投与は胎盤におけるTPH阻害を目的としたものであるが、p-クロロフェニル アラニンが母体に全身性の作用を及ぼす可能性も考慮する必要がある。そこで、胎盤特異的にTPHの発現を阻害する手法としてレンチウィルスによる胚盤胞栄養外胚葉へのTph1 shRNAの導入法を検討する。
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