2012 Fiscal Year Annual Research Report
Wntモルフォゲンの動態と受容の発生・細胞生物学的解析
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24870031
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
三井 優輔 基礎生物学研究所, 分子発生学研究部門, 助教 (70634129)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | モルフォゲン / ヘパラン硫酸 / Wnt / sFRP / アフリカツメガエル / 拡散 |
Research Abstract |
本研究では、モルフォゲンとして知られる分泌性シグナル蛋白質のWntが、組織中でどのように振る舞うか(拡散等)という事とともに、Wntによるシグナル伝達を一種の情報処理と捉えて、シグナルが細胞に受容される前後でどのような細胞生物学的現象が起こるのかを主にアフリカツメガエル(以下Xenopusと記す)胚を用いて解析する。 1. Xenopus胚で発現させたmVenus-Wnt8およびmVenus-Frzbの細胞間隙における挙動を蛍光相関分光法にて解析した。その結果、それぞれ自由拡散的な動きをしている分子が一定割合観測されたが、これまでに得られている知見と総合すると、細胞間隙においてそれらの分泌性蛋白質の大部分はヘパラン硫酸等に結合しており、自由拡散成分の量は限られていることが示唆された。そこで発生場でのモルフォゲンの挙動の全体像を記述すべく、ヘパラン硫酸の微小構造(HSNSs)に基づき、結合成分と自由拡散成分を考慮した濃度勾配形成の数理モデルを構築した。従来モルフォゲンの拡散現象は1成分を想定してモデル化されてきたが、本研究では2成分モデルを提案することで1成分では説明しがたい現象をうまく説明することができるようになった。 2. 非典型経路を活性化するWntとして知られるWnt11の機能の解析を行った。原腸胚でWnt11を発現させたところ、Wnt11発現細胞において頂端収縮(apical constriction)が見られた。Wnt11は原口背唇部において発現することが知られており、原腸形成開始時の最初期の細胞の形態変化がWnt11で制御されている可能性が考えられる。また並行してWnt11に対する抗体作成を行い、少なくとも過剰発現した蛋白質を免疫染色で検出可能なウサギ抗血清を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、蛍光相関分光法による分泌性蛋白質の測定を行い、その結果を基に数理モデルを構築することができた。特に数理モデルに関しては、観測結果を踏まえて、新たに結合成分と自由拡散成分の2成分を考慮したモデルを構築することができた。従来の1成分のモデルでは拡散現象は説明できても、モルフォゲンの局所的集積は説明しづらかったが、本研究で得られた2成分モデルはモルフォゲンの局所的集積現象をうまく記述できる。このため、本研究で解析したWntやsFRPのみならず、多くのヘパラン硫酸結合性の分泌性蛋白質の挙動を理解する為の基本モデルとなり得ると考えている。 またWnt11の機能解析において、原腸形成時の最初期のイベントたり得る、背側での頂端収縮にWnt11が関与している可能性が得られた。この可能性は当初計画では考慮していなかったが、観察が容易であり、Wnt11の関与を念頭に形態形成運動を細胞レベルで解析する良いモデル系になると期待している。今後内在性のWnt11蛋白質の局在が焦点になると考えているが、そのために免疫染色可能な抗体の作成に取り組んだ。当初はモノクローナル抗体の作成を計画していたが、費用対効果や抗体作成の成功率を熟慮した結果、ウサギのポリクローナル抗体を作成した。これは過剰発現したWnt11蛋白質を免疫染色可能なことを確認しており、当初計画分の予定を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. HSNSはプロテオグリカンが集合したものである可能性が高い。そこでXenopus原腸胚に発現が知られる、Glypican、Syndecan等のプロテオグリカンがWntの分布に与える影響およびそれらのコア蛋白質自身の分布を検討する。そのため蛍光蛋白質を融合したコンストラクトをXenopus胚で発現させ、蛍光観察によるライブイメージングおよび免疫染色でその分布を高解像度で解析する。またコア蛋白質に対する糖鎖付加の状態を検討するため、Xenopus胚で発現させたエピトープタグ付きのGlypicanやSyndecanに対して抗ヘパラン硫酸抗体でウェスタンブロット解析を行う。GlypicanやSyndecanには機能ドメインや糖鎖付加部位が知られているのでそれらの欠損体や変異体を作成し、同様の解析を行う。 2. Wnt11による頂端収縮の可能性を引き続き検討する。これまでWnt11の発現が頂端収縮を引き起こす十分性が示唆されているので、Wnt11の発現阻害を行い、必要性についても解析する。また内在性のWnt蛋白質の局在を可視化する為、免疫染色を行う。この結果を定量的に解析する。また従来の共焦点顕微鏡での解析では表層の観察しかできなかったが、胚の透明化を行い2光子顕微鏡を用いることで、Wnt発現細胞の3次元画像を取得して、細胞形態を高解像度で解析する。
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Research Products
(4 results)