2012 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスサテライトRNAが引き起こす黄化病徴に関わる分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
24880005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
志村 華子 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20507230)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ウイルス / サテライトRNA / RNAサイレンシング / 病徴誘導 |
Research Abstract |
これまでの研究において、Y-satによる黄化誘導はY-sat由来のsiRNAが宿主のクロロフィル合成経路の主要遺伝子(ChlI)へRNAサイレンシングを誘導することに起因することを証明した。しかし、Y-satのsiRNAがRNAサイレンシングの複雑なメカニズムによってどのように生産されるのかは明らかになっていない。そこで、RNAサイレンシングを構成する重要酵素であるDCL及びRDRに着目し、それらがY-satの増殖をどのように制御し黄化誘導するのかを解明することを目的として研究を行った。 平成24年度はRNAサイレンシング経路のDCL2およびDCL4を導入したCMVベクター(A1:DCL2、A1:DCL4)を作製した。このCMVベクターを野生型タバコに接種したところ、コントロール個体に比べてDCL2とDCL4発現が減少しており実際にサイレンシングが誘導できていることを確認できた。A1:DCL2、A1:DCL4、Y-satの接種個体を用いてCMVとY-satの定量解析により、RNAサイレンシング経路においては、DCL2よりもDCL4のほうがCMVとY-satの分解に影響が大きいことが分かった。また、A1:DCL2、A1:DCL4接種区どちらにおいても、ChlI発現は減少し黄化病徴も誘導されることが分かった。また、Y-satの感染はDCL2とDCL4発現を促進することが分かった。 また、RDR6を導入したCMVベクターも作製し、RDR6ノックアウトタバコも用いることで黄化誘導メカニズムにおけるRDR6の役割も解析した。RDR6ノックアウトタバコにY-satを接種すると健全タバコに接種した場合よりも黄化誘導が顕著であった。このことから、黄化誘導はRDR6とは独立して生じることが分かったが、RDR6がY-satの増殖やsiRNA生成に影響している可能性があることも見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAサイレンシングにおける重要酵素であるDCL2、DCL4およびRDR6に対して効率よくサイレンシングを誘導できるCMVベクターを作製でき、これらのベクターを用いた接種実験およびその後の解析により、特にDCL4がY-satの増殖に重要な役割を持つことを明らかにできた。また、RDR6も黄化病徴へ影響することを示唆する結果も得られており、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度の研究において、DCL4がY-satの分解に重要であることが分かったが、DCL4はRDR6と協調して機能することが知られていることから、RDR6もまたY-satの分解やさらには黄化誘導にも関与する可能性も考えられる。そこでCMVベクターによるRDR6のサイレンシング誘導やRDR6ノックダウン植物を用いた解析を続けて行う。黄化病徴や、DCLやRDRなどのRNAサイレンシング遺伝子の発現が異なる様々な試験区において、CMVの増殖量、Y-satの増殖量を定量し、さらにY-satのsiRNA生成がどのような影響をうけるのかをノーザンブロットによって解析する。 また、Y-satによるChlIのin vitro RNA切断・翻訳実験を行う。これは、Y-satとChlIの直接結合はDCLによって認識されるのかという仮説を検証するためのものであり、in vitro転写したChlI mRNAとY-satを混合し、これに精製したDCLを加えて、両RNAの結合部位でDCLを介した切断がおきるかを精査する。ChlI mRNAの切断箇所の配列は5' RACE実験によって特定する。また、wheat germ in vitro翻訳系を用いて、Y-satがChlI mRNA分解を誘導する一方で、ChlI mRNAの翻訳阻害を起こしている可能性ついても検証する。
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Research Products
(15 results)