2012 Fiscal Year Annual Research Report
精巣上体における精子の選択的分子獲得機構に関する研究
Project/Area Number |
24880010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浅野 敦之 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10630981)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | 受精 / 精子 / 精巣上体 / 細胞膜 / エクソゾーム |
Research Abstract |
最近までの研究から、精巣上体上皮細胞が管内腔に分泌するエクソゾームは、膜ラフトを介して精巣上体成熟において精子の選択的外部タンパク獲得を促進していると考えられた。そこで本研究では以下2つの実験計画を遂行している。1)膜ラフトの精子精巣上体成熟における機能的役割まず、と蓄場由来ブタ精巣上体にマイクロカニューラを使って精巣上体エクソゾームの還流を試みた結果、精巣上体尾部内容物の回収に成功した。その後その内容物を超高速遠心分離に供し、エクソゾームを含む分画を獲得した。次に、ビオチンで標識したエクソゾームを精子と共培養に供した後、精子の獲得したタンパク質のプロファイルをSDS-PAGEで調べた。この結果、一部のエクソゾームタンパクが精子において確認されたことから、エクソゾームは精子の選択的タンパク質獲得に関与していることが判った。しかし、SDS-PAGEで検出されたタンパク質シグナルは微弱だったことから、現在実験条件の最適化を進めている。今後条件を最適化でき次第、膜ラフトを崩壊させたエクソゾームを使って、同様の共培養実験を進める。また、ブタにおいて精巣上体一次培養細胞の確立を行った。その結果、マウスと比べブタでは精巣上体細胞を効率的に分離できないことが判った。この原因は、精巣上体塊に含まれる精子やその他結合組織がマウスに比べ多いことによると推察される。そこで精巣上体からの精子の前除去、および消化酵素量を変更し実験条件の検討を進めている。2)膜ラフト制御下にある機能性タンパク分子種の同定回収したエクソゾームをSDS-PAGEに供した結果、様々なタンパク質がエクソゾームに会合していることが判った。しかし、タンパク質シグナルが微弱であることから、エクソゾームを増量して条件検討を行っている。条件検討が終わり次第、界面活性剤(TX-100)不溶性分画のプロテオームを進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、実験の開始が赴任から間がなかったため、実験室環境のセットアップに時間が相当の時間を費やすことになり、十分に実験の時間がとれなかったことが理由の一つである。この問題は徐々に緩和されてきているので、今後は実験の進展も早くなると考えられる。 この状況下でも、精巣上体から分離したエクソゾームをブタ精巣上体精子と共培養した際、一部タンパク質の以降が起こることを示す知見が得られたことは率直に評価したいと考えている。 また、本実験は、申請者が確立したマウス精巣上皮一次培養細胞の作製法を元に、ブタ精巣上体でも同様の実験を遂行する予定であったが、思わぬところでマウスと比較してブタ精巣上体上皮一次培養細胞の単離が困難であることが判明した。現在、従来法に修正を加え、実験条件の最適化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験によって、実験上の様々な問題点が浮き彫りにされた。ます、今後マススペクトロメトリーを使って、エクソゾームから精子へ移行したタンパク質種を同定するためには、SDS-PAGEである程度のタンパク質シグナルを得る必要がある。そのため、より多くのタンパク質がビオチン化されるような処理条件への変更、ならびに実験に用いるエクソゾームの量を増やすなどして対応したいと考えている。 またブタにおいて精巣上体一次培養細胞の確立に技術的障害があることが判明したため、まず従来法の改良など実験条件の検討を進めている。万が一、以上の取り組みで技術的障害が取り除けない場合には、精巣上体一次培養細胞を使った実験をブタからマウスに変更することで解決を図る予定である。この精巣上体上皮一次培養細胞の確立は、本年度計画している精巣上体成熟における上皮細胞―精子幹のクロストーク機構の解明に不可欠であることから、現実的に対応をしたいと考えている。 さらに本年度は、エクソゾームからの精子へのタンパクの移行を促進する生理条件、ならびに機能的役割を調べる計画にしている。万が一、精巣上体一次培養細胞の利用が、ブタからマウスに変更された場合には、当初計画のエクソゾーム処理精子による人工授精は技術的に遂行不可能となるので、代替法として体外受精法の利用を計画している。
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Research Products
(3 results)