2012 Fiscal Year Annual Research Report
エピゲノム形成における卵子特異的リンカーヒストンH1fooの分子作用機序の解明
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24880015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 晃司 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (50636800)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / ヒストン / DNAメチル化 / クロマチン / 卵子特異的 |
Research Abstract |
(成果1)H1foo強制発現ES細胞におけるChIP-SeqによるH1foo結合部位の探索およびHELP-taggingによるDNAメチル化状態の解析次世代シークエンサーを用いたゲノムワイド解析には先行研究で作製したH1foo融合EGFPを恒常的に発現させたES細胞(以下、H1foo強制発現ES細胞)を使用し、抗GFP抗体によるChIP-Seqを行うことでH1fooのゲノム上の標的領域を同定した。H1fooの標的領域はゲノム上に約3万ヵ所存在し、その多くは遺伝子プロモーター領域(24.7%)と遺伝子内領域(59.3%)に位置していた。また、体細胞型H1に対する抗体を用いてChIP-seq解析を行ない、H1fooの標的領域と比較したところ、H1foo標的と重複した領域の割合はH1foo全標的領域の内20.8%だった。つまり、H1fooは体細胞型とは異なった標的領域を有することが示された。さらに、H1foo強制発現ES細胞と野生型ES細胞のDNAメチル化状態を次世代シークエンサーを用いたHELP-tagging法により決定し比較することでH1fooによりメチル化・脱メチル化される領域を同定した。H1fooの強制発現によってゲノム全体としてはメチル化されるのみならず脱メチル化されるCpGサイトも存在していた。また転写因子をコードする遺伝子のプロモーター領域がH1fooによって脱メチル化される傾向が強かったことから、H1fooは転写ネットワークをポジティブに調節するエピジェネティック因子であることが示唆された。(成果2)マウスH1foo特異抗体の作製マウス卵子でChIP解析を行うために、抗H1foo特異抗体を作製した。ウエスタンブロッティング法、免疫染色法、クロマチン免疫沈降法に問題なく使用できることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、(1) H1foo強制発現ES細胞におけるChIP-SeqによるH1foo結合部位の探索およびHELP-taggingによるDNAメチル化状態の解析、(2)マウスH1foo特異抗体の作製を目標に解析を遂行した。(1)においては、次世代シークエンサーによるデータを取得しH1fooのゲノム上の標的領域を同定することができ、体細胞型H1とは異なった標的領域を有していたことから、エピゲノム形成に対するH1foo特異的な機能を示唆する結果を得た。加えて、H1foo発現下でDNAメチル化状態が変化する領域も次世代シークエンサーを用いた解析によって同定することができた。これらの結果は、当初掲げた24年度の目標を達成しているといえる。(2)においても達成できており、タンパク質を用いる解析手法とウエスタンブロッティング法、免疫染色法およびクロマチン免疫沈降法すべてに利用可能で、他のH1バリアントは認識しない非常に特異性の高い抗体を作製することができた。加えて、この抗体を用いたクロマチン免疫沈降をマウス卵子で行うため、解析に十分量の卵子は回収済みである。以上より、おおむね順調に進んでいる、と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果により、H1foo強制発現細胞を用いて、次世代シークエンサーを用いたChIP-Seq法とHELP-tagging法を駆使することで、H1fooのゲノム上の標的領域とH1fooの強制発現によってDNAメチル化状態が変化する領域を同定することができた。25年度は、H1foo標的領域とDNAメチル化情報を組み合わせて、H1fooによってDNAがメチル化・脱メチル化される領域の特徴を明らかにし、それぞれのメチル化変化に必要なH1fooのパートナー因子を突き止めることを目標とする。内容として、(計画1)公共データベース(NCBIやDDBJ等)に登録されている転写因子、DNA結合タンパク質、エピジェネティック因子およびヒストン修飾のChIP-Seqデータの利用、加えてゲノム配列解析(モチーフ配列探索)を行うことでH1foo標的ゲノム領域の特徴付けを行う。(計画2) H1foo特異抗体を作製し、実際にマウス卵子においてH1fooが上記の実験で明らかとしたゲノム領域に局在しているかをChIP法で、計画1の解析でH1fooと共局在する因子が示唆された場合にはH1fooと直接結合し標的領域に位置しているかをRe-ChIP法で調べる。(計画3)H1foo共局在因子がH1fooによるエピジェネティック制御に必須の因子かを発現抑制実験で明らかにする。以上により期間内で、ゲノムワイドにH1fooの標的領域が明らかになるとともに、H1fooを中心としたエピジェネティック制御の分子作用機序に迫る成果を得られる。
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