2012 Fiscal Year Annual Research Report
次世代シーケンサーで迫るナガキクイムシの共生微生物生態
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24880034
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
遠藤 力也 独立行政法人理化学研究所, 微生物材料開発室, 協力研究員 (90634494)
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Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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Keywords | ナラ枯れ / カシノナガキクイムシ / 養菌性キクイムシ / 次世代シーケンサー / 酵母生態 / メタゲノム |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)の媒介者であるカシノナガキクイムシ(Platypus quercivorus,以下、カシナガ)が樹木内で大増殖するメカニズムを、共生微生物との関係を端緒として解明する。すなわち、「虫の餌資源と考えられる共生菌類は、巣内でどのようにして安定的に供給され得るのか?」という問いに対し、「巣内の共生菌類群集の成立には、バクテリア群集が関与している」という仮説を立て、これを検証するための基礎的知見を蓄積することを目的とする。本研究では、カシナガ、“太平洋型カシナガ”、ヨシブエナガキクイムシ、ヤチダモノナガキクイムシの4種を供試予定である。 24年度は、上記4種の中で最も手に入りづらいと想定していた“太平洋型カシナガ”のサンプルが手に入り、培養法による巣内の菌類群集解析を行った。この結果、“太平洋型カシナガ”はカシナガと同種の可能性が高い酵母が巣内で優占していることが判った。また、ヨシブエナガキクイムシについてもサンプルが手に入り、培養法による巣内の菌類群集解析を遂行している。上記2種については、次世代シーケンサーを用いた非培養法による微生物群集解析を実施するため、巣内の微生物ペレットを凍結して保存した。 また、次世代シーケンサーによるメタゲノム解析のコストパフォーマンスを上げるため、タグをつけたプライマーを設計した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年度は、供試予定のカシナガ、“太平洋型カシナガ”、ヨシブエナガキクイムシ、ヤチダモノナガキクイムシの4種のうち、分布域が最も限定されている“太平洋型カシナガ”のサンプルが手に入った。貴重なサンプルであったため、次世代シーケンサーによる群集解析のサンプル調製と共に、培養法による菌類群集解析を優先的に実施した。また、これによって得られた菌株に新規性の高い希少な酵母が含まれていたため、詳細な同定作業を実施している。 以上の実験作業に時間を費やしたため、次世代シーケンサーによる解析が当初の想定より少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度のうちにヨシブエナガキクイムシと“太平洋型カシナガ”のサンプルが手に入り、次世代シーケンサー用に検体を調製する前段階まで処理を進めた。今年度は、入手の容易なカシナガのサンプルを入手するとともに、実際に次世代シーケンサーを駆動させてデータを取得する作業を8月末までに終了させる。 次世代シーケンサーによる群集解析に時間がかかるようであれば、サンプル入手の難易度がやや高いヤチダモノナガキクイムシは、本年度中の解析実施に見切りをつけることも検討する。 また、解析結果をもとに共生系のメンバーとして重要と推定されるグループのバクテリアについて、培養を試みる。さらに、培養に成功し株が確立したものについては、申請者が所属するカルチャーコレクションに菌株を寄託する。
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Research Products
(3 results)