2012 Fiscal Year Annual Research Report
前骨芽細胞の破骨細胞分化ニッチェ形成に対する骨代謝ホルモンの作用
Project/Area Number |
24890005
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 珠希 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80580943)
|
Project Period (FY) |
2012-08-31 – 2014-03-31
|
Keywords | 前骨芽細胞 |
Research Abstract |
当研究は前骨芽細胞ネットワークにおける破骨細胞の挙動に関して解析することを主目的としているが、解析にあたり、実験動物における骨破壊モデルを要した。免疫不全モデルマウスに骨指向性をもつヒト乳癌細胞を投与し、下肢骨に骨の転移及び破壊像を樹立した。分子生物学的手法や組織化学的手法を用いて、癌と骨代謝関連群の相互関係や前骨芽細胞系ネットワークの作用に関して検索した。ヒト乳癌細胞を免疫不全モデルマウスに注射4週後からマウスの上腕及び下肢骨に骨転移巣が樹立された。骨転移は軟エックス線上での明らかな骨破壊像により確認した。同部位を用いて、解析サンプルとした。下肢骨(主に大腿骨)への転移巣をサンプルとして解析したが、骨端、骨幹端及び骨幹にヒト乳癌細胞が浸潤し、骨破壊像を呈していた。骨端部では癌細胞が浸潤している周囲の骨表面にTRAPとALPの陽性細胞が多数認められ、骨破壊を行なっている様相が確認された。さらに骨破壊が進行した骨幹端及び骨幹では骨破壊が著しく、骨梁が喪失し、その代わりに類骨様の組織の増生を一部に認めた。TRAPとALPの組織染色像から、骨破壊の初期では破骨細胞と骨芽細胞の活性化を認めるが、骨破壊の後期、すなわち一通り骨破壊が終了した時期には両者の活性化を認められず、骨破壊から一転骨増生を認める結果が得られた。今回の研究では不明な点が多くある骨細胞にも着目して解析を行なった。近年、骨細胞の骨代謝調節や骨基質ミネラル調節における多数の成果が報告されており、骨代謝の主役の一つとして骨細胞があげられる。乳癌細胞が転移した周囲の骨細胞においては、骨細胞産生因子として知られているFGF23およびSOSTの発現の低下を示した。乳癌細胞が転移することにより、骨細胞に影響を及ぼしていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究の主目的である前骨芽細胞ネットワークにおける破骨細胞の挙動を解析するための実験動物モデルの系は樹立している。今後は組織化学的に骨代謝に関連した細胞や骨代謝関連因子を解析する。系は樹立していため、研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究結果を確かなものにするため実験動物の下肢骨での骨転移巣(骨破壊部位)のサンプル数を増やす必要がある。確実な実験系を樹立するためには、今後は実験動物の匹数を増やして種々の段階の転移巣サンプルを作製する予定である。確実な実験系が樹立できれば、現在治療に用いられている薬剤の効果や作用機序の解明にも役立つ可能性がある。これまでの研究では、用いた乳癌細胞がマウスの主に下肢骨に転移をし、骨破壊を示すことは確認できている。さらには、骨破壊が進行した後、一部に骨増生を示す部位も認められ、生体の防御機能を示唆する所見も得られている。今後は、前骨芽細胞や破骨細胞の相互作用や挙動に関して詳細に検索する予定である。確実な研究データを学会で発表し、さらには論文に投稿することで、この情報を発信していく予定である。
|